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納豆発展の歴史

江戸っ子の頭脳力を高めた朝餉納豆


 歴史の流れの中で、現在ほどの全国的な納豆ブームではないにしても、人気が爆発したのが江戸時代。中でも、納豆が大好きだったのが、江戸っ子でした。
 江戸勤番の和歌山藩士が記した『江戸自慢』の中に、「からすの鳴かぬ日はあれど、納豆売りの来ぬ日はなし。土地の人の好物なる故と思はる」とあるのです。
 江戸っ子の納豆好きは、いろいろな記録に残されていますが、その一端を示すのが、次のような川柳です。

江戸っ子の頭脳力を高めた朝餉納豆

● 納豆を帯ひろどけの人が呼び
「納豆屋さーん!」。あわててとび出してきた、寝おきのおかみさんが、帯を引きずっています。

● 納豆を呼んでため小便をたれ
男は、さすがに余裕があります。片手にどんぶりでも持っているのでしょうか。江戸の朝食に、納豆は欠かせなかったのです。

● 納豆と蜆に朝寝おこされる
「なっと、なっとーッ」と、早朝の下町に威勢のよい売り声でやってくるのが、納豆屋とシジミ売りだったのです。

● 夜明とともに納豆売が来る
夜明けの明星が光を失う時刻になると、決まってやってくるのが、納豆屋さんであり、その売り声だ。

納豆は、はじめは冬の味覚として親しまれてきましたが、江戸中期以降になると、江戸のような巨大消費都市では、現在と同じように年間商品に成長していきます。

幕末の『守貞漫稿』に、次のような説明が出ています。
「(納豆売り)大豆を煮て、室に一夜おき、これを売る。寒い地方では野菜が不足しがちなので、納豆で補った。江戸では夏もこれを売る。汁にして煮たり、あるいは、醤油をかけて食べる。京坂では、自家製だけで、店売りのものはあまり見かけない」

江戸時代、日本中でもっとも納豆を食べていたのは江戸以北の人びとでした。納豆には、創造力や頭脳力、先見力などを高めるレシチンやグルタミン酸、ビタミンB類が多く、これらの成分が力となって、やがて江戸を「東京」という、世界の表舞台に押し上げるパワーになっていったのではないでしょうか。