■最優秀賞(農林水産大臣賞)
「つるの子納豆」
(株)豆蔵(北海道札幌市)
本間 照蔵さん
優勝する気で出品していなかったので、受賞を知らされたときには、とてもびっくりしました。特別に手を加えたものではなく、自然体で作った納豆でした。
原料である鶴の子大豆にはとても思い入れがあります。五十年ほど前、29歳のときまで、道南の今金町で農家をやっていました。明治時代から生産されていた鶴の子大豆は、作ればいつでもどこでも売れるという、人気の高い豆でした。換金しやすいので、子どもを養育しようとする家では、卵や長芋、小豆などとともに鶴の子大豆をよく作っていました。それ以来、この大豆に惚れこみ、昭和50年から2アイテムの納豆を作り続けてきました。今回受賞したものと、さらにもっと大きい粒を使ったものがあります。大きい豆でも、ご飯にかけたときにじゅうぶん食べられる、柔らかい納豆に仕上げています。納豆は、原料の豆の個性を出す、思いやりのある作り方をしないとうまさを強調できません。これまで2度入賞し、3度目で日本一となりました。
鶴の子大豆は豆が大きく、皮が薄く、甘味があるのが特長です。世界一うまい大豆で、今後、これ以上の大豆は生まれないと思います。品種改良は行われても、気品のある見た目と味の良さという、鶴の子らしさがないものは、鶴の子大豆だとは認められません。今後も道南で作り続けられてきた伝統を守っていくべきです。
とてもおいしい大豆なのですが、収穫時期に天候が不順であることが多く、生産が難しいので、生産量がきわめて少ないのが悩みです。受賞はとても嬉しいのですが、売れ行きがよくなったからといって、そう簡単には増産できません。原料がなくならないように調整をし、心配しながら納豆を作っています。
私の息のあるあいだは、「つるの子納豆」は作り続けます。