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  3. 第18回全国納豆鑑評会 結果講評

今年度の日本一おいしい納豆は
(有)村田商店の「道祖神(どうそじん)納豆」に決定

栃木県は、首都圏に立地することを生かした農業が盛んで、農業産出額は全国第10位、特にいちごとかんぴょうの収穫量は日本一です。
また、納豆の原料である大豆の生産地でもあり、単位面積当たりの収穫量は、北海道、佐賀県に次ぐ第三位となっています。さらに、宇都宮市の1世帯あたりの納豆年間消費額は全国6位と、納豆消費の盛んな土地柄でもあります。栃木県宇都宮市の「宇都宮東武ホテルグランデ」にて、平成25年2月22日(金)に第18回「全国納豆鑑評会」が開催されました。全国納豆鑑評会とは、全国納豆協同組合連合会(納豆連)が主催する品評会で、日本一の納豆(農林水産大臣賞)を決定する毎年恒例の大会です。納豆の製造技術の改善と品質の向上を目的として始まり、第1回の東京大会を皮切りに全国各地で開催されてきました。昨年度の第17回は青森でした。栃木県での開催は初めてです。

審査対象となる納豆は、納豆連に加盟する納豆メーカーが自社製造する納豆。今回は総出品数が218点で、その内訳は小粒・極小粒部門で78点、大粒・中粒部門で80点、ひきわり部門で39点、同じく昨年度新設されたアメリカ大豆部門で21点でした(1メーカー各部門1点までの出品)。審査するのは、研究者、文化人、食品関係者、省庁関係者など総勢30名。評価方法は納豆の「見た目」「香り」「糸引き」「味・食感」の4項目について、それぞれ3点満点で評価されます。

そして今年度、栄えある最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞したのは、(有)村田商店の「道祖神(どうそじん)納豆」。このほか、小粒・極小粒部門および大粒・中粒部門から、優秀賞が各3点と優良賞が各2点、さらに特別賞として栃木県知事賞が1点、関東農政局長賞が各1点、永山久夫賞が各1点、ひきわり部門から納豆連会長賞が1点、アメリカ大豆部門からRed River Valley U.S. Awardが1点選出されました。これら入賞した商品は、5年間にわたり、パッケージに受賞した賞を明記する栄誉が与えられます。

集計作業中には会場内において、世界納豆普及協会主催の「第3回世界納豆まぜまぜ選手権」および「第3回世界納豆のびのび選手権」が開催されました。世界納豆普及協会会長永山久夫氏のあいさつでは「和食が世界食になろうとしてる現在、納豆の持つ意義を世界に発信していくことが重要。納豆の糸が伸びるということは、納豆菌が繁殖している証拠である」と述べられました。
「まぜまぜ選手権」は、昨年度の最優秀賞受賞納豆をもちいて納豆を混ぜる動作の美しさと混ぜる回数を競うもの。2人の出場者がそれぞれ1分間にかき混ぜた回数の合計値で争われます。地元栃木はもとより、東京やアメリカからの参加者を含む5組10名により、美の競演が繰り広げられました。参加者たちは力強くはしを回転させ、思い思いの笑顔を浮かべながら、納豆に空気を含ませていました。優勝は工藤卓伸さんと三浦大典さんのコンビで、2分間で二人がかき混ぜた回数の合計記録は226回でした。惜しくも世界新記録242回には届きませんでしたが、さわやかな笑顔が印象に残りました。「のびのび選手権」は、昨年度の最優秀賞受賞納豆をもちいて混ぜた納豆から伸ばした糸の長さを競うもので、5組10名の参加者により、真剣勝負が繰り広げられました。暗幕の前を、きらめきながらふわりと伸びていく納豆の糸の見事さに、観客は酔いしれました。優勝は、いきなり競技室の壁まで到達し、それ以上計測不能という15mの大記録を打ち立てた高橋孝光さんと平井涼代さんのコンビでした。

次に、自治医科大学附属さいたま医療センターの早田邦康准教授による講演「納豆=長寿の源であるポリアミンの王様」が行われました。さらに、栃木県内の福祉施設に納豆が贈呈されました。来年度の第19回全国納豆鑑評会は三重県で開催される予定です。

以下、審査員のコメントを付記します。

講評

全国納豆協同組合連合会 会長 笹沼隆史さん

全国納豆協同組合連合会 会長 笹沼隆史さん

今年は採点方法が変わったので、「見た目」「香り」「糸引き」「味・食感」の4項目についてすべていいものというのはありませんでした。際立っていいもの、劣ったものはなく、平均的なものが多かったです。原料の大豆の良さを引き出しているかという、発酵技術が向上してきて、全体的に平均以上の品質のものばかりになっています。

須見洋行さん (倉敷芸術科学大学 教授)

須見洋行さん (倉敷芸術科学大学 教授)

ひきわりは寿司に入れて食べる人が多いので、品質にも幅がありますね。発酵を進めすぎるとチロシンができたりして難しいので、全体的に浅めの発酵度合いになっています。黒大豆におもしろいものがありました。黒大豆は表面の皮が固いので、それを分解する方法を今後検討したらいいと思います。

早田邦康さん(自治医科大学さいたま医療センター 准教授)

早田邦康さん(自治医科大学さいたま医療センター 准教授)

全体のレベルが高く、審査は難しかったです。ここ2、3年、劣ったものはなく、好き嫌いの判断によるところが大きいです。豆の味を前面に出したものや、納豆菌の独特の風味を強調したものなど、それぞれの特徴が感じられました。納豆なので、納豆菌に注目して香りと味がいいものを評価しました。総合的に判断して、いくつかいいものがありました。

永山久夫さん (食文化研究所 所長)

永山久夫さん (食文化研究所 所長)

メーカーの努力の成果が出て、例年、おいしいものぞろいで評価が難しいです。平均的にうまくなりましたね。作り方はほとんど同じなので、できあがりに極端な差はありません。品質の差は、作られたときの状態を保ったまま送られたかという点の優劣によって生まれているのだと思います。何点か特にいいものがありました。くせがなくうまみが強く、糸がほどほどにあって、かみごたえがあるというものがいいですね。かみごたえがないと、ご飯に負けてしまいます。

増田亮一さん(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 主任研究員)

増田亮一さん(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 主任研究員)

すべて一般的なレベルに達しているので、審査は難しいです。基本的には各審査員の好み、納豆に対するイメージによって判断するしかありません。それでも特にいいものは少数ありました。豆の味が感じられればいいとかそういうことではなく、評価項目の総合的なバランスが重要です。

長谷川裕正さん(茨城県工業技術センター 副センター長)

長谷川裕正さん(茨城県工業技術センター 副センター長)

全体的にいいものがそろい、品質の差は縮まっています。鑑評会の効果によって品質向上につながっているのでしょう。豆の味という観点からいうと、これはおいしいというものがありました。個人的には、黒豆でいいものがありました。固い皮を柔らかく仕上げたものがあったのです。また、大粒と中粒を1部門に入れているので、中には小粒に近い中粒というものがあります。そうすると、大粒に比べるとだいぶ小さいわけで、それらを一緒に評価するのは難しいですね。

古口久美子さん(栃木県産業技術センター 食品技術部 微生物応用研究室 特別研究員)

古口久美子さん(栃木県産業技術センター 食品技術部 微生物応用研究室 特別研究員)

ぐーっとうまみの強いものからあっさりとしたものまで、いろいろな種類の納豆に触れられてうれしかったです。食感については、食べたとき、豆がねっとりとした感じのものがいいですね。糸引きについては、口の中にまといつき、豆が転がるような感じのするものがいいと思います。

納豆写真

本年度入賞作品(写真下中央が最優秀賞の「道祖神(どうそじん)納豆」)

鑑評会の風景

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