三重県は、『日本書紀』などの倭姫命伝説では「美し国」と称され、海や山の豊富な自然に恵まれ、農業・漁業が盛んな地域。また、それらに培われた歴史や文化を蓄積し、松尾芭蕉や本居宣長などの先人を輩出した地域でもあります。桑名市は、東海道でも唯一の海上路「七里の渡し」のある宿場町として栄えた町で、『古事記』に由来する「多度大社」、冬季のイルミネーションでは国内最大規模を誇る「なばなの里」などで賑わう観光の町でもあります。
平成26年2月21日(金)、「桑名シティホテル」(桑名市中央町)にて、第19回「全国納豆鑑評会」が開催されました。全国納豆鑑評会とは、毎年2月に行われる日本一の納豆(農林水産大臣賞)を決定する、全国納豆協同組合連合会(納豆連)主催の品評会です。納豆の製造技術の改善と品質の向上を目的として始まり、第1回の東京大会を皮切りに全国各地で開催。昨年度の第18回は栃木県宇都宮市で開催。三重県では初めての開催となりました。
審査対象となる納豆は、納豆連に加盟する納豆メーカーが自社製造する納豆で、今回の総出品数が208点。内訳は大粒・中粒部門が71点、小粒・極小粒部門が76点、アメリカ大豆部門が23点、ひきわり部門が38点。(1メーカー各部門1点までの出品)。審査員は研究者・文化人・食品関係者・省庁関係者など総勢30名。評価方法は納豆の「外観(見た目)」「香り」「味・食感」の3項目について、秀でたものを5点、劣るものを1点として出品納豆に点数がつけられ、合計点数上位から受賞納豆が決定します。
本年度入賞作品(写真下中央が最優秀賞の「国産ふっくら大粒ミニ2」)
今年度、栄えある最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞したのは、潟с}ダフーズの「国産ふっくら大粒ミニ2」。このほか小粒・極小粒部門および大粒・中粒部門から、優秀賞が各3点、優良賞が各2点、特別賞として、東海農政局長賞が各1点、永山久夫賞が各1点、ひきわり部門から全国納豆協同組合連会長賞が1点、アメリカ大豆部門からRed River Valley U.S. Awardが1点の合計17点が選出されました。これらに入賞した商品は、5年間にわたり、パッケージに受賞した賞を明記する栄誉が与えられます。
集計作業中、会場内では世界納豆普及協会主催の「第4回世界納豆まぜまぜ選手権」および「第4回世界納豆のびのび選手権」が開催されました。本来昨年度の最優秀賞受賞納豆を用いて競うのですが、大雪のため会場に届かず、地元小杉食品の納豆を用いて競技が行われました。地元桑名市、三重県はもとより、東京やアメリカからの参加者を含む8組16名によりそれぞれの競技が行われました。
「のびのび選手権」は、混ぜた納豆から伸ばした糸の長さを競うもので、8組16名の参加者により真剣勝負が繰り広げられました。暗幕の前をきらめきながらふわりと伸びていく納豆の糸の見事さと、真剣な表情で挑む参加者に観客は惜しみない拍手を送りました。参加者のインタビューでは、「糖尿病予備軍だったが、納豆を1年間朝昼晩食べ続けたところ改善した」という経験談を話す方もあり、会場が耳を傾けるシーンもありました。優勝は、競技室の壁近くまで到達し、昨年の15mを上回る15.7mの大記録を打ち立てた石川さんと山本さんのコンビでした。
「まぜまぜ選手権」は、納豆を混ぜる動作の美しさと混ぜる回数を競うもの。単に回数の多さだけをめざすものではない点がこの競技の特徴であり、参加者たちは力強くかつエレガントにはしで納豆をまぜ、空気を含ませていました。優勝は116回/分を混ぜた石川さん、水谷さんのコンビ。世界新記録242回/分には届きませんでしたが、元気いっぱい、ほがらかな笑顔が印象的でした。
イベントの後には、自治医科大学附属さいたま医療センターの早田邦康准教授による講演「遺伝子にはたらきかけアンチエイジングを達成する納豆のポリアミン」が行われました。市内や三重県をはじめ、愛知、滋賀などからも足を運んだ聴講者もあり会場は満席に。聞き慣れない「納豆のポリアミン」も「アンチエイジング」というキーワードに、女性だけでなく男性も興味深く耳を傾け、公演終了時には惜しみない拍手が会場に響きました。
審査発表の前には、桑名市内の福祉施設に納豆が贈呈されました。
来年度の記念大会となる第20回全国納豆鑑評会は茨城県で開催される予定です。
以下、審査員のコメントを付記します。
毎年水準が上がって来ていて、最近は僅差が多く同点決定のようなこともある。大粒を審査したが、4点ほど優れていると感じるものがあった。色、香り、食感はそれぞれによくても、バランスがとれないものもあり、食感がよくて、味も香りもいいという総合的にいいと感じるものを選んだ。
それぞれのレベルが近づいてきてしまっているので非常に審査が難しかった。見た目のいいものが必ずしも味がいいとは限らず、バランスを見ながら「見た目を3、食べた感じ(粘り触感)などを7」として審査した。小粒でも黒豆を使用するなどの工夫があったり、出品納豆には様々なバリエーションがあり、アテンション力があると感じる納豆もあった。
全体的にレベルがものすごく揃ってきたなと感じた。見た目も差が少なく、発酵状態では大衆受けするように考えられているのか、匂いが少ない感じのするものが多かった。一番好きな小粒部門の審査を担当したが、比べているうちに食べすぎるほど、それぞれに差がないと感じた。
今回、ひきわり部門とアメリカ部門を担当したが、これまで審査してきた大粒、小粒より更に差がなく年々レベルが高くなり、それぞれに甲乙つけられず審査するのが大変難しかった。毎年よくなっているなと感じ、3つの項目について総合的に判断し、いいなと感じるものを評価した。
小粒を審査したが、年を重ねるごとにかなりレベルが高くなってきたと感じた。採点では味を重視しつつ、あらかじめある程度のレベルに達しているものなど欠点のないものを選び、その中から見た目、香りにも重点を置き、再度確認をしながら審査をした。
納豆鑑評会が今回桑名で初めて開催され、試食してみて、東西の納豆の味も香りも色々あり、それぞれに違うことを実感した。審査中、「普段食べているのはコレだろう」とわかる納豆があり、地元の納豆の味が自分の好みの味になっているのだろうと思えた。今後も納豆はもちろん、さまざまな食品の鑑評会を桑名で開催できれば嬉しい。
味噌を作っている立場から、大豆、中でも黒豆を使っているものなどがあることが興味深かった。それぞれの香りの深さ、見た目などを審査し4〜5品くらい満点があった。納豆の専門家ではないので、今回は消費者として審査をしたが、同じ醸造として味噌と納豆がお互いに高め合い普及できればいいと思う。