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今年度の日本一おいしい納豆は
(有)菅谷食品の「国産大粒 つるの子納豆」に決定

日本が世界に誇る総合栄養食「納豆」の日本一を決める「全国納豆鑑評会」の第20回大会が茨城県水戸市で開催されました。
茨城県水戸市は江戸時代には水戸徳川家の城下町として栄え、古くから行政、経済、文化の中心地として発展を遂げてきました。日本三公園のひとつ偕楽園をはじめ、歴史文化遺産が数多く残され、テレビドラマ「水戸黄門」のモデルとなった徳川光圀公は特に有名です。

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中でも水戸納豆は全国的に知られた名産品。その歴史は古く、1083年に源義家が奥州に向かう途中、水戸市渡里町の一盛長者の屋敷に泊まった折に馬の餌にする藁の上に捨てられた煮大豆がほどよく発酵しているのを発見し、今日の糸引き納豆が誕生したという逸話も残っています。
水戸納豆が全国的に広がったのは明治時代。多くの納豆屋さんがたくさんの人が集まる水戸駅や旅行客で賑わう偕楽園で土産物として納豆を販売したことがきっかけと言われています。
こうして納豆は水戸の土産物として高い人気を得ることになり、旅行客の口コミで「水戸納豆はうまい」と全国に広がっていきました。

このように水戸市は古くから納豆作りが盛んで、納豆の本場と言われるように2014年の水戸市1世帯あたりの納豆年間消費額は全国二位と、納豆食文化が非常に浸透した土地柄であります。まさに水戸と納豆は切っても切れない関係といえます。

平成27年2月28日(土)、茨城県水戸市「ホテルレイクビュー水戸」(水戸市宮町)にて
開催された第20回「全国納豆鑑評会」。

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審査対象となる納豆は、納豆連に加盟する納豆メーカーが自社製造する納豆で、今回の総出品数が204点。
内訳は大粒・中粒部門が69点、小粒・極小粒部門が73点、アメリカ大豆部門が23点、ひきわり部門が39点。(1メーカー各部門1点までの出品)。
審査員は研究者・文化人・食品関係者・省庁関係者など総勢30名。
評価方法は納豆の「外観(見た目)」「香り」「味・食感」の3項目について、秀でたものを5点、劣るものを1点として出品納豆に点数がつけられ、合計点数上位から受賞納豆が決定します。

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今年度、栄えある最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞したのは、(有)菅谷食品の「国産大粒 つるの子納豆」。このほか小粒・極小粒部門および大粒・中粒部門から、優秀賞が各3点、優良賞が各2点、特別賞として関東農政局長賞が各1点、永山久夫賞が各1点、ひきわり部門から納豆連会長賞が1点、アメリカ大豆部門からRed River Valley U.S. Awardが1点、そして水戸大会特別賞として茨城県知事賞が1点、水戸市長賞が各1点、合計20点が選出されました。

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集計作業中、会場内では「納豆食堂 全国納豆大博覧会」および、水戸観光協会主催の「第14回水戸納豆早食い世界大会」が開催されました。

「納豆食堂 全国納豆大博覧会」とは納豆の魅力を世界中に発信するため、全国から集められた納豆を地元水戸市産のおいしいお米と合わせて納豆ごはんとして来場者に提供するイベントで、300食分の納豆ごはんが無料で振る舞われました。
全国各地の納豆と地元のおいしいお米が食べられると、多くの家族連れで賑わいました。

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また、「水戸納豆早食い世界大会」は水戸の郷土食である納豆を全国に広める事を目的に、納豆ご飯や、わらつと納豆を間食するまでのタイムを競う大会で、男性の部、女性の部の2部門で納豆早食い世界一を決定する大会。通常は梅まつりの最中に開催されるのですが、今回は全国納豆鑑評会と同時開催となりました。

はじめに茨城県をはじめ全国各地から募集した150名の参加者で予選が行われました。
参加者の中には、アメリカ、中国、フィリピン、ガーナからの参加者も含まれ、文字通り世界規模での大会となりました。

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予選の種目は「納豆ご飯早食い」タイムトライアル。
男性の部は納豆90グラムにご飯310グラム、女性の部は納豆90グラムご飯210グラムをいかに早く食べるかを競います。
予選とはいえ真剣勝負の激しい早食い合戦が繰り広げられ、戦いを勝ち抜いた男女各10名が決勝進出の切符を手に入れました。

決勝戦の前には水戸市マスコットキャラクター「みとちゃん」、そして茨城県非公認キャラクター「ねば〜る君」が応援に駆けつけ決勝出場者にエールを送りました。
今、話題のゆるきゃらの登場に会場にいた子供たちはもちろん大人たちからも大きな歓声が上がり、大いに盛り上がりました。

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決勝戦は、わらに包まれた水戸名産「わらつと納豆」5本(350グラム)、女子は3本(210グラム)を一番早く食べた者が優勝となり「納豆早食い世界一」の称号が与えられます。

世界一の称号をかけた一戦ということもあり緊張感に包まれるなか、まずは女子の部の決勝が行われました。決勝戦の名に相応しいスピード感あふれる激しい戦いを制し優勝したのは昨年度の覇者、東京都の竹谷真美さん。
記録は33,08秒と昨年に自身が記録した32.14秒の世界記録を更新することは出来ませんでしたが、見事二連覇。王者の貫禄を見せつけました。

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次に男性の部が行われ、こちらも白熱した真剣勝負。この熱戦を制し「納豆早食い世界一」の称号を手にしたのは栃木県の飯塚真也さん。
記録は33.66秒でした。昨年記録された20.84秒の世界記録の更新はなりませんでしたが、納豆をいっきにかき込む迫力満点の姿に、会場から大きな拍手が送られました。

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納豆の本場と言われる水戸市での開催となった第20回「全国納豆鑑評会」は多くの一般来場者、報道関係者が集まり大盛況のまま幕を閉じました。
来年度の第21回「全国納豆鑑評会」は宮城県気仙沼市で開催される予定です。

以下、審査員のコメントを付記します。

講評

全国納豆協同組合連合会 会長 野呂剛弘

全国納豆協同組合連合会 会長 野呂剛弘

納豆への関心が非常に強い水戸での開催という事で例年にない盛り上がりを感じた。
回数を重ねるにつれ年々レベルが上がっているので今回も非常に難しい審査になった。
審査のポイントは糸の引き具合。苦味、臭みがなくて糸がよく出るという事は発酵がうまくいった証拠。今回はびっくりするくらい美味しく満点をつけざるを得ない納豆が二品あった。
納豆の今後のトレンドとして納豆そのものの変化はあまりないと予想するが、もっと小さいパックの少容量の納豆が出てくるのではないかと思う。

全国納豆協同組合連合会 副会長 工藤茂雄

全国納豆協同組合連合会 副会長 工藤茂雄

年々、出品数が多くなる一方で全体的なレベルが上がってきているので、いよいよ審査が大変になってきている。明らかにひどいものがなくなり、全てが一定のレベルを満たしているので減点方式で審査しないと良いものが浮かび上がってこない。食感、味を重視して審査した。大粒を担当したが、熟成が進んで苦味が出ているものがいくつかあったように思う。賞味期限の最後まで美味しさを保てるかも重要。
今後は納豆をあまり食べない地域へのアプローチとして臭わない納豆、粘らない納豆も出てきてもいいのではと思う。

須見洋行さん(倉敷芸術科学大学 教授)

須見洋行さん(倉敷芸術科学大学 教授))

昔は納豆の出来にバラつきがあったが最近は全体的にレベルがものすごく上がっている。
年々技術が上がり、見た目もとても良くなってきている。
今回はひきわり部門とアメリカ部門を担当したが、特にひきわりは食べてみないとわからなかった。優劣がつけづらく非常に時間がかかった。香りが良いものを評価した。

早田邦康さん(自治医科大学さいたま医療センター 准教授)

早田邦康さん(自治医科大学さいたま医療センター 准教授)

年々レベルは上がってきている。これは鑑評会をやってきた成果だと思う。選ぶのが大変になってきているが、その中でも品質がよく美味しいものがある。
審査のポイントはシンプルに多数の人が美味しいと思うかどうか、という客観性。
傾向として香りがないものが増えるなか、今回は納豆の香りがしっかりするものが二つほどあった。こうやってどんどん進化していってほしい。納豆は健康に対して良いとされる科学的根拠があり、アンチエイジングの効果が見えてきている食品。これからは海外に向けてもっとアピールし、世界を目に向けた納豆作りを期待している。

永山久夫さん(食文化研究所 所長)

永山久夫さん(食文化研究所 所長)

全国納豆鑑評会には20回欠かさず参加しているが、今大会が今までの中で一番レベルが高かった。年を重ねることにレベルが上がっているので、甲乙つけるのが非常に難しかった。
審査のポイントは味と糸の引き具合。食べた時に程よく粘り感が残るものを評価した。
和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、これからは世界中から納豆が注目される事になる。この素晴らしい納豆を日本だけで食べるのは申し訳ない。世界中の人に食べてもらいたい。

石塚 修さん(筑波大学 教授)

石塚 修さん(筑波大学 教授)

今回が初めての審査だったが並べてみることで各メーカーさんが非常に工夫して納豆を作っていると感じた。ひきわり部門とアメリカ大豆部門を担当したがどれもレベルが高く一般消費者が美味しく食べられるだろうという事を念頭におき審査した。
審査のポイントは見た目と香り。特に焦げたような香りがあるかないかをチェックした。 これからはご飯と合う納豆はもちろんだが、納豆単体としての進化に期待したい。

長谷川裕正さん(茨城県工業技術センター 主席研究員)

長谷川裕正さん(茨城県工業技術センター 主席研究員)

全体的にレベルが上がりすべての納豆が高い水準で安定してきたと感じる。納豆の見た目と糸の引き具合、ねっとりとした独特の食感のあるものを評価した。
全体的な傾向として柔らかい納豆が多くなってきている。味に関しては旨みを強くしようとすると発酵が進みすぎるという問題も出てくるので、あっさりしたものが多かった。旨みと発酵の進み具合のバランスが重要。

佐塚正樹さん(山形県立米沢女子短期大学 教授)

佐塚正樹さん(山形県立米沢女子短期大学 教授)

原料は同じ大豆なのにそれぞれこんなに個性が出るのかと驚いた。年々香りは弱くなり、食べやすいフルーティーな納豆が増えてきたと感じる。
今後は海外に展開する事も考え外国人の方にも受け入れられる納豆が出来てきていると感じた。それぞれの納豆に個性があり、これはメーカーの努力の賜物。一般消費者の立場からするといろんな納豆が選べるのでありがたい。食感と味に重きを置いて審査した。

中川一恵さん(中川学園 料理教室 代表)

中川一恵さん(中川学園 料理教室 代表)

初めて参加した感想として、同じ納豆なのにそれぞれ違いがある事に驚いた。これはたくさんの納豆を一度に食べ比べてみないとわからない事。こんなに違いがあるとは思ってもみなかった。
審査のポイントは豆の味を第一に、香りが良く、糸の引き具合をチェックした。全てが合格点の納豆もいくつかあった。
納豆は日本古来から食されている健康食品。もっと納豆を広く伝えていきたい。

一条善惠さん(料理研究家)

一条善惠さん(料理研究家)

ひきわり部門とアメリカ大豆部門を担当したが、全体の印象としてアメリカ大豆は味が整っていて、ひきわりの方は味にばらつきがあった。納豆の味がしっかりしているかに重きを置いて審査した。
作り方、味は現代に合わせて変わってきている。昔ながらのわらで包んだ納豆の風味は少なくなっていると感じた。

鈴木智美さん(2015年水戸の梅大使)

鈴木智美さん(2015年水戸の梅大使)

一般消費者の代表として今回はじめて、審査に参加させてもらった。まず種類の多さ、色形にそれぞれ違いがあるのに驚いた。
納豆は好きだが、その詳細を熟知しているとは言えないので、豆の柔らかさと最初に感じる香りと直感で選んだ。納豆といえば水戸。今後の納豆の活躍に期待している。