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  3. 埼玉県本庄市「伝統の味ナピラ!」

全国納豆ファンの皆様こんにちは!
納豆大好き夫婦のリョウタ & トモコです!
納豆写真家の夫リョウタと食いしん坊のOL妻トモコが日本全国に伝わる美味しい納豆食文化を紹介する『ニッポンおいしい納豆地図』
今回は埼玉県本庄市の納豆グルメをご紹介!

●歴史ある埼玉県本庄市

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本庄市は埼玉県北西部に位置する花と緑に囲まれたエコタウン。
江戸時代に中山道の宿場町として発展し、近年ではきゅうりやなすが全国トップクラスの生産量になるほど農業が盛んな地域だ。
秋に行われる「本庄まつり」は豪華な山車が見物できて、関東屈指の盛り上がりを見せる。
また古墳の発掘が多い地域としても知られており、本庄市は縄文期、弥生期、古墳期から現代へと、人々が生活してきた証が確認できる歴史ある土地なのだ。
今回はそんな本庄市に『謎の料理ナピラ』があると聞きつけた僕たちは、早速取材を開始した。

リョウタ「ナピラの調査の前に、ちょっと観光していこか」
トモコ「えー!?私お腹すいたよー!早くナピラすすりたいんだけど!」

『ナピラをすする』って、妻は何故かナピラを麺類って決めつけてるらしい。
腹ペコな妻を連れて、秋山古墳群へ向かった。

●古代ロマン「秋山古墳群」

本庄市は古墳が多い土地として知られており、現在でなんと622基!もの古墳が確認されている。市のイメージキャラクターには埴輪の『はにぽん』を起用して市を盛り上げている。

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リョウタ「これが秋山庚申塚古墳やね」
トモコ「思ってたより可愛いサイズなのね」

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秋山庚申塚古墳は6 世紀後半に作られた直径34 メートルの円墳で、周辺からは円筒埴輪、人物や動物、家などの形象埴輪が出土されている。

リョウタ「1400年前にもここで人々が暮らしてて、それを今感じられるってロマンあるよなぁ」(感慨深くなっておもむろにシャッターを切る(リョウタ)
トモコ「ねぇ思ったんだけど…」(神妙な顔のトモコ)
トモコ「はにぽんの耳ってさ、ドーナツみたいで美味しそうだよね!帽子はチョコクッキーみたいだし!」

なんの話や。
空腹時の妻は何を見ても食べ物に繋げてしまうらしい。

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古墳の中を覗いてみる。

リョウタ「立派な石室やなぁ。王様がこの部屋いっぱいの宝物と一緒に埋葬されてたんかもなぁ」
トモコ「宝物かぁー…私だったら、この部屋に大好きなハンバーグとポテトをぎっしり敷き詰めて眠りたいかな」

なんやそのファミレスの貯蔵庫みたいな墓は。

古代から人々が暮らしてきたこの土地で、納豆は一体どんな料理へと進化しているのか。謎の料理ナピラに期待を胸に僕たち二人は目的のお店に向かった。

●地元に愛される老舗喫茶

リョウタ「でもナピラって一体どんな料理なんやろなぁ」
トモコ「私わかった!『ナピラ』は『納豆ピラミッド』の略なんじゃない?山盛りの納豆が出てきたりして!」
リョウタ「トモコは大食いやもんな(笑)」

そんな話しをしながら歩いていると目的のお店『えとせとら』が見えてきた。

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リョウタ「え?喫茶店なんや!」
トモコ「なんだか可愛いお店ね。店名の文字も懐かしい感じでいいね!」

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『喫茶えとせとら』は本格的なサイフォンコーヒーと楽しめる開店から40年の歴史がある老舗の喫茶店。種類豊富な軽食も人気で、ランチタイムにはいつも満席になるほど、古くから地元の人々に愛されている名店だ。
謎の料理『ナピラ』を注文するために、早速メニューを見せていただく。

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リョウタ「んー?ナピラが見当たらないな、、」
(メニュー表から『ナピラ』の文字を探すリョウタ)
トモコ「もしかして、これ、、かな?」

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妻が指差したのは『納豆ピザライス』

店主「そうです。納豆・ピザ・ライスの頭文字をとって『ナピラ』なんです。」
リョウタ & トモコ「えーー!!!」

想像していなかった意外な組み合わせに興奮する僕たち。

ナピラは納豆ピザライスの略で、本庄市では家庭で日常的に食されるほどメジャーな料理なんだそう。

●本庄市民のソウルフード『ナピラ』

厨房で作り方を見せていただきました。

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まず耐熱皿にバターを塗り、ご飯を盛り付け、醤油を適量垂らす。
そしてかつおダシを絡めた納豆をイン!!!
具は玉ねぎとピーマン、ベーコンとサラミ。
店主「昔はベーコンじゃなくてハムを使ったりしてたみたいですね」
チーズは多めに盛りつけて、仕上げのパン粉をまぶす。

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アツアツのオーブンで7分ほど焼いたら…

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完成!!!

熱々の湯気と共に、ナピラが僕たちの目の前に現れた。
リョウタ「すごい迫力!まるで猛々しい山!ナピラ山や!」
香ばしいパン粉とチーズの焦げた匂いがカウンターいっぱいに広がる。

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『サクッ!!!!』
スプーンを入れると気持ちの良い音が。持ち上げるとずっしりとした重量感と共にチーズがとろーりと溶けだし、中からぎっしり詰まった納豆とご飯が層になって現れた。

リョウタ「う、美しい、、」

興奮してシャッターを押す手が止まらない僕。
いつものように「早く食べようよ」と妻が脇をつつく。

リョウタ&トモコ「いただきまーす!!」

サクッ、ホクホクッ、ハフハフッ、、、、

う、美味いーー!!!!
な、なんだこれは!?

口に入れると最初に来るのはチーズの濃厚な香り。
そして噛むほどに納豆の優しい甘さとベーコンの旨味が交互に攻めてくる。
そしてそれら全体をまとめるお米の甘さ。硬めのご飯が口の中でパラパラとほどけて混ざり合い、幸せな気分になる。

トモコ「醤油だけのシンプルな味付けなのにこんなに豊かな味わいになるんだね。」

確かにいわゆる納豆ドリアとは違って、しつこさは全く無い。野菜も納豆もベーコンもサラミもお米も素材そのものの美味しさが際立っていて、それぞれが主役になっている。

リョウタ「シャキシャキのピーマンとタマネギも甘くて美味しいなぁ」
トモコ「ナピラ山の中は宝物でいっぱいね!全部美味しい!!」

あっという間に完食してしまった。

リョウタ & トモコ「ごちそうさまでした!」

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●ナピラ誕生秘話

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えとせとら2代目店主の島崎隼生(しまざきとしき)さんにお話を伺った。

リョウタ「ナピラの歴史は長いと聞きましたがどうやって誕生したのですか?」
島崎さん「ナピラは元々はとある喫茶店のまかない飯だったんです」

えとせとらの先代が勤めていた喫茶店でまかないとして食べられていた『ナピラ』。その従業員達が独立してお店をだした際に、ナピラの美味しさが忘れられず、各々の店でメニューとして出され始めたのが始まりだそう。それからナピラは、家庭で作られ るようになり、それぞれの家でアレンジされ、おふくろの味として定着していった。
そうして一度は本庄市に広まったナピラだが、この40 年のうちに無くなりかけたこともあったそう。

島崎さん「後継者問題などもあって、ナピラを出していた喫茶店が徐々に閉店してしまったんです。その中でも唯一うちだけがメニューに残し続けてたんですよ」

えとせとらのお陰で絶滅を免れたナピラは、その後本庄市青年部の協力により再び人気を取り戻し、今では本庄市のご当地グルメとして広く知られるようになった。

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島崎さん「今ではトマトソースを使ったナピラやおにぎり型のナピラなど、新しいナピラが誕生してるんですよ!」

そう嬉しそうに語る島崎さんの笑顔には、伝統のレシピを守り続けたナピラへの変わらない愛で溢れていた。

リョウタ「いやー美味しかったー」
トモコ「ナピラはやっぱり『納豆ピラミッド』の略だったね」
リョウタ「え?」
トモコ「ナピラって古墳みたいにな形だし、過去から後世に受け継がれてる。それに…中は納豆の宝物でいっぱいだったし!」
リョウタ「確かにそうかもな笑」



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豆写真家夫婦
納豆写真家 リョウタ 

バター風味の納豆オムレツに出会って以来、 納豆の魅力に取り憑かれ新しい納豆料理を探す日々。 納豆への愛が日々強まり続けた結果、 日本独自の食文化である納豆が全国各地の特色と 混ざり合うことで、どのような形になっているのか を後世に伝える「納豆写真家」!? ライフワークは終わりなき納豆の可能性の探求。 まさに、「ねば〜エンディングストーリー」!

妻 トモコ

東京出身で一見どこにでもいるような普通のOL。 しかしその実態は、納豆のみならず食べることに 命をかけている納豆美人!美味いものがあると聞 くと、九州だろうが東北だろうが新幹線に飛び乗っ て、日本各地どこへでも旅立つ。 名言のひとつに「美味しいものを食べ尽くすには、 日本の有給は少なすぎる」がある。 『納豆女子コンテスト』で最終選考まで残った? という経歴の持ち主。リョウタの自慢の妻である。