全国納豆ファンの皆様こんにちは!
納豆大好き夫婦のリョウタ& トモコです!
納豆写真家の夫リョウタと食いしん坊OLの妻トモコが、日本全国に伝わる美味しい納豆食文化を紹介する『ニッポンおいしい納豆地図』
今回は愛知県名古屋市の納豆グルメをご紹介!
愛知県名古屋市は日本三大都市のひとつであり、言わずと知れた中部地方と東海地方の行政・経済・文化の中心地である。
中でも「名古屋めし」といわれる独特の食文化があり、味噌カツ、きしめんに始まり、小倉トースト、あんかけスパ、ひつまぶし、天むす、手羽先、台湾ラーメンなど、多くの名物料理が訪れる観光客を魅了している。
東西の文化が混ざり合い独自の進化を遂げた都市、それが名古屋なのだ。
そんな名古屋市に『THE名古屋な納豆料理』を出すお店があると聞きつけた僕たちは、早速取材を開始した。
トモコ「着いたー!名古屋はいつきてもワクワクするね!」
リョウタ「なんかわかるかも。気合い入るよな『さあ!今日は楽しむでぇ!』みたいな笑」
トモコ「あ!味噌カツだ!きしめんもある!よしデザートは小倉トーストね!」
いつでも食欲旺盛な妻が、もう駅ビルの飲食店に吸い込まれそうになっている。
リョウタ「待て待て取材が先や!今日は名古屋の文化を掘り下げて行こうと思うんや」
トモコ「えー!やだやだやだーー!ごはんごはんーーー!!!」
半泣きで抵抗する妻の腕を引っ張りタクシーに押し込む。
僕たちは名古屋城へ向かった。
名古屋城は徳川家康の命により、西側の豊臣方からの侵攻の備えとして、慶長17年(1609)に建てられたと言われている。日本三名城のひとつであり、そのスケールの大きさと雄大な佇まいは見るものを圧倒する。
リョウタ「うわー!かっこいいなぁ!!金のシャチホコがまたアクセントになって貫禄あるわぁ!」
興奮してシャッターを切る手に力が入る僕。
トモコ「へーあれがシャチホコってお魚かぁー!エビフライの元祖でしょ?」
リョウタ「いや全然ちゃうわ!シャチホコは顔が虎でからだは魚の鯱(しゃち)っていう空想上の生き物がモデルや。口から水を出すといわれていて、火事から建物を守る守り神として置いてるんや。」
トモコ「なるほど、食べられるマーライオンみたいな感じってことね!」
だからまず食べられへんて。色々間違えすぎやろ。
次は本丸御殿へ。
本丸御殿は尾張藩主の住居・政庁として建てられた。その豪華絢爛な内装は来客者を驚かせていたという。
リョウタ「わぁ、、、、、」
あまりの豪華さに息を飲む。ここは訪問者が最初に通され対面を待つための殿舎。
襖も屏風も金一色でたくさんの虎がお出迎えしてくれる。
当時の訪問者はこんな金ピカの部屋に通されて虎に睨まれながらどんな気持ちで待ってたんだろう。
徳川家の権力を見せつけられているようで、庶民の僕は想像しただけで緊張して萎縮してしまう。
トモコ「あの虎達ふかふかでかわいいね!綿飴みたい!」
妻には食べ物のテーマパークに見えているようだ。豪胆なのかなんなのか、、笑
御成御殿の中で最も格式の高い上洛殿。
襖から天井に至るまであらゆる細部に装飾が施されていて、当時の一流の職人達の技術見ることができる。
リョウタ「名古屋は徳川宗春の時代に文化都市として大きく栄えたんや。その頃は他の土地は倹約政策が基本やったから、江戸や京都の芸人達が職を求めてみんな名古屋に集まってきたんやって」
さらにお祭り好きだった宗春がお祭りの山車を作るために、京都の職人を多く移住させたことが、今の『ものづくり愛知』の伝統を形作る一因になったのだ。
トモコ「名古屋にくると元気がでる感じがするのって、そのお祭り好きの活気を受け継いでるからなのね!」
取材を終えた僕たちは、本丸を抜けて飲食店が軒を連ねる『金シャチ横丁』へ向かった。
トモコ「金箔豆腐ソフトクリームだって!!!これ食べたい!」
丁寧に金箔で包まれたソフトクリームをパクリ。
リョウタ「美味しい!」
濃厚なミルクの風味の中に大豆の優しい甘みが広がって後味はさっぱり。観光で歩き疲れた身体に糖分が染み入ってくる。
トモコ「うむ。なかなか悪くない味ぞよ」
豪華なビジュアルのソフトクリームに、すっかり殿様気分の妻。
リョウタ「でも今日取材する『名古屋らしい納豆料理』ってどんなんなんやろな?」
トモコ「もしかして、納豆ご飯に金箔載せただけだったりして笑。ところで名古屋めしってさ、実は名古屋発祥じゃないものが多いって知ってた?」
リョウタ「え?」
トモコ「ひつまぶしは津市、天むすととんてきは三重県でしょ、あとモーニングは豊橋や一宮って言われてるのよ」
さすが妻。食べ物に関してだけは見識が深い。
トモコ「でも実際全国に広めたのは名古屋なんだろうし、美味しく進化してくれるなら生まれがどこでも私はいいんだけどね!」
そして寛容!食文化が盛り上がるならノーサイドというわけだ。
周りの文化をどんどん取り込んで独自に進化していくこの街で、どんな納豆料理に巡り逢えるのか。
期待に胸を膨らませながら、僕たちは目的のお店に向かった。
八事日赤という駅から徒歩で向かう。
小道に入り住宅街を抜けると大きな看板が見えてきた。
トモコ「見てあの大きな看板!マウンテンだって!」
リョウタ「喫茶店なんや!山のロッジみたいな風格のある店構えやなぁ!」
『喫茶マウンテン』は、名古屋市昭和区にある創業50年を超える老舗喫茶。
初代店主の「この世にないものをつくる」というコンセプトから生まれた独自メニューが人気で、これまでの提供してきたメニューは累計300種類!を超えるという。
良い意味で『奇食』とも称される唯一無二の味を求めて全国からお客様が絶えない名古屋を代表する喫茶店だ。
店内は革張りのソファーで広々としたボックス席が並んでいる。
リョウタ「渋い内装で落ち着くなぁー。昔ながらの喫茶店って感じや」
トモコ「見て見て!おすすめメニューだけでこんなにあるの!?どれにしよう!5品くらいなら頼んでいいわよね!?」
"5品くらいなら"ってなんや。「孤独のグルメ」の井之頭五郎やないんやから。
グランドメニューを開いて『納豆』の文字を探していると、、
『納豆ピラフ』
リョウタ「え?う、うん、ま、まあ、喫茶店らしいメニューやな」
突飛なメニューが来るもんだと勝手に期待しすぎていたのか、なんだか少し拍子抜けしてる自分がいた。
きっとなにか名古屋らしい工夫があるに違いないと思い直し、店員さんに注文を告げる。
リョウタ「この『納豆ピラフ』をひとつください」
トモコ「あと『納豆サボテン卵とじスパ』とと〜、マウンテン名物の『甘口抹茶小倉スパ』で!」
ん?????
なに???????
『納豆サボテン卵とじスパ』?
『甘口抹茶小倉スパ』?
妻よ。何をふざけているのかな?
店員さんを困らせちゃいけないよ。
いや、えええええええ!?あるの!!!?
トモコ「楽しみだね!」
聞いたことのない組み合わせに動揺しまくる僕。
こんな変わったメニューを平然と注文する妻は、食に寛容なのかそれとも鈍感なのか、、
店主「お待たせしましたー」
次々にテーブルに運ばれてきた料理を見てまず驚いたのはその量だ。
リョウタ「こ、これ全部普通盛りやんな?」
どれも山のように盛られいて、どの料理もゆうに2人前を超えている。大きなお皿はテーブルに乗り切らないほどだ。
トモコ「ふふん。少しは私を楽しませてくれそうじゃないの」
好敵手をみつけたとばかりに目を輝かせる妻。いや大食い界のラオウみたいなコメントするな。
まずは『納豆ピラフ』から頂くことに。
スプーンで掬うと食欲をそそる香ばしい香りが。よく見るとひきわり納豆が入っているのが見える。
リョウタ&トモコ「いただきまーす!!」
う、う、う、美味い!!!
ベースはピリ辛な味付けのピラフだが、噛んでいく度にひきわり納豆の優しいコクが顔をだしてくる。
お米もパラパラでもなくベタベタでもない、食感を楽しめるちょうどいい塩梅だ。
トモコ「玉ねぎとネギの爽やかな香りが鼻に抜けてよいアクセントになってるね!」
実は納豆を使ったピラフやチャーハンは納豆の匂いがキツすぎたり、全体が納豆の味に一色になってしまったりすることが多い。
しかしこの納豆ピラフはバランスが良くて食べやすくて、次の一口、次の一口とスプーンを動かす手が止まらなくなる。
リョウタ「きっとこのスパイシーな味付けが全体をまとめてるんやな。タバスコとか入ってるんかな?」
店主「自家製の八丁味噌を使ってるんです」
なるほど八丁味噌か!!
ガツンとくる凝縮された旨味に爽やかな酸味。
この具材達をまとめていたのは愛知県の調味料だったのか!
トモコ「ご馳走様〜!!はい次!!」
肩をブンブン回しながら妻が言った。
二合はある量のピラフをあっという間に平らげてしまった。
次は『納豆サボテン卵とじパスタ』を頂く。
具材は卵、玉ねぎ、ひきわり納豆、マッシュルーム、そしてサボテン。
サボテン?納豆?卵とじ?しかもパスタ?もうよくわかりません。もはやカオスです。
でも、このアグレッシブさが『THE名古屋』の真骨頂という感じがしてワクワクしてくる。この震えは恐怖なのか武者ぶるいなのか。
まずはサボテンを恐る恐る一口、、、
パリッ、、パリッ、、、
、、、、、、
美味しい、、
歯ごたえがあって、味はピーマンのような爽やかな青味と苦味。そして独特なのは後からくるのは強い酸味。
トモコ「サボテン美味しいねぇ!結構酸っぱいんだね!なんだかお新香みたい笑」
パスタと一緒に食べてみる。
口に入れると和風だしの旨味と納豆の香り口の中に広がる。さっきのピラフとはまるで逆で、全体がふんわりと優しい味だ。
玉ねぎのシャキシャキ、炒り卵の甘み、納豆のコク、サボテンの酸味、それぞれの素材の味がダイレクトに楽しめる。
リョウタ「具材それぞれが主役なんやな。なんか賑やかなお祭りみたいやな笑」
普段は出会わない食材達がパスタの敷地を借りて踊ってるようだ。
店主「実はその食用サボテンはウチの家庭菜園で育ててるんですよ」
ええーー!?育ててるの!?季節によっては注文が入ってから店先に採りに行くこともあるそう。
珍しいメニューの中にも、店主のこだわりが垣間見えた瞬間だった。
トモコ「ご馳走様!はい!次の皿いっくよーー!!」
コンサートみたいな盛り上がり方してるやん。『次の曲』みたいにいうてるやん。
絶好調の妻は大盛りパスタも完食して次の料理へ。
マウンテン名物の甘口スパシリーズ『甘口抹茶小倉スパ』
緑色のパスタの上に生クリームと餡子。
こ、これはえらいこっちゃ。
小倉トーストがある名古屋でもこれが食べれるのはここだけだろう。
えいやと一口食べてみると、、
小倉餡のぼってりとした甘さが口に広がる。
生クリームがパスタの熱で少し溶けてクリーミーさをだしていて、思ってたよりも食べやすい。
自家製の餡子が甘すぎず上品で、コーヒーとの相性はバッチリといった感じだ。
しかし僕の胃袋はかなり前から悲鳴をあげている。
トモコ「この抹茶味のパスタが歯ごたえあって面白いね!」
笑顔で大盛りパスタをどんどん平らげていく妻。あとは任せたとばかりにその姿を眺める僕。
いけー!頑張れ!あと少し!もうちょっと!
あと一口!
トモコ「ふぅ、ご馳走様でした!!!」
よっしゃー!!!!
謎の達成感を感じて思わずガッツポーズをしてしまった。
2代目店主の加納隆久さんにお話を伺った。
リョウタ「このお店の独自メニューの数々はどうやって生まれたんですか?」
加納さん「ウチの親父が創業した時から、とにかく色んなものにチャレンジしてたらしいわ」
元々探究心の強かった先代の店主が、お客様に喜ばれるものを作っていたらどんどんメニューが増えていったんだそう。量がすべて大盛りなのも近所の学生さん達がシェアしてお腹いっぱい食べられるようにと段々量が増えていった。すべてはお客様のことを考えてのことだった。
リョウタ「でもサボテンと納豆を使ったパスタなんて初めて食べましたよ」
加納さん「実はウチの妻がメキシコ人なんだよ。メキシコに親父も連れて家族で旅行に行った時に思いついたんだよ」
サボテン食が普及しているメキシコ。なんとあの独自メニューは日本とメキシコを繋ぐ愛の結晶だったのだ!
日本だけでなく海外のものまで柔軟に取り入れるこの姿勢こそが『名古屋めし』といえるのではないだろうか。
加納さん「うちは変なメニュー多いけど、10人中8人が美味しいっていう料理を狙ってないのよ。たとえ10人中2人にしかウケなくても、このお店でしか食べられないものを提供したいんよね」
喫茶マウンテンのオリジナリティ溢れる納豆料理は「お客様を喜ばせたいという想い」と、良いものはなんでも取り入れる「名古屋のボーダレスな文化」が産みだした、まさに『THE名古屋な納豆料理』だった。
トモコ「あー美味しかった!流石にお腹パンパンよ笑」
リョウタ「マウンテンの料理を完食することを『登頂成功』って言うらしいで」
トモコ「確かに最後の方、謎の一体感あったよね。頑張れー!とか言ってさ笑」
リョウタ「お祭り騒ぎやったな笑。やっぱり名古屋は元気な街やわ」
バター風味の納豆オムレツに出会って以来、 納豆の魅力に取り憑かれ新しい納豆料理を探す日々。 納豆への愛が日々強まり続けた結果、 日本独自の食文化である納豆が全国各地の特色と 混ざり合うことで、どのような形になっているのか を後世に伝える「納豆写真家」!? ライフワークは終わりなき納豆の可能性の探求。 まさに、「ねば〜エンディングストーリー」!
東京出身で一見どこにでもいるような普通のOL。 しかしその実態は、納豆のみならず食べることに 命をかけている納豆美人!美味いものがあると聞 くと、九州だろうが東北だろうが新幹線に飛び乗っ て、日本各地どこへでも旅立つ。 名言のひとつに「美味しいものを食べ尽くすには、 日本の有給は少なすぎる」がある。 『納豆女子コンテスト』で最終選考まで残った? という経歴の持ち主。リョウタの自慢の妻である。