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動脈硬化が死因の隠れ1位
その動脈硬化を防ぐポリアミン!

 「人は血管から老いる」といわれますが、その主原因ともいえるのが動脈硬化です。動脈硬化が進行すると、心臓病や脳卒中など死に到る病気を引き起こしかねません。その動脈硬化の原因の1つである、血管の炎症を抑える物質・ポリアミンの効果が、自治医科大学大宮医療センターの早田邦康先生らの研究で明らかになりました。そのポリアミンを最も多く含む食品の1つが、納豆。ここでは、納豆に多く含まれるポリアミンが、隠れ死因のワースト1ともいえる動脈硬化を抑えるメカニズムを紹介します。

1.炎症を防ぐことが動脈硬化防止の鍵

日本人の死因の1位はガン、2位は心臓病、3位は脳卒中です。このうち心臓病と脳卒中は、動脈硬化が主原因になります。注目すべきは、心臓病と脳卒中、この両者を合わせれば、ガンとほぼ同数になることです。ということは、動脈硬化は死因の隠れ1位≠ニいっても過言ではないでしょう。 動脈硬化は高血圧や糖尿病、高脂血症、痛風などの生活習慣病とも密接な関係にあります。すなわち、動脈硬化を防ぐことが生活習慣病の予防になり、健康長寿の鍵も握っているわけです。

 その動脈硬化は、いったいどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。順を追って、簡単に説明すると次のようにして起こります。

まず、血液中にLDL(悪玉コレステロール)が増えてきて、それが動脈壁に沈着します。 LDLは活性酸素という毒性の強い酸素によって酸化され、酸化LDLとなります。この活性酸素は諸刃の刃で、体内に侵入した細菌やウイルスを撃退してくれる一方、過剰に増えすぎると、LDLや細胞を酸化させるなど、マイナスの働きをしてしまうのです。活性酸素は大気汚染や紫外線、水道水に含まれる塩素、食品添加物、ストレス、喫煙などで増加します。そのため、現代人にとって、活性酸素の害は避けられないといえるでしょう。

その活性酸素は、血管の一番内側にある血管内皮細胞も刺激し、そこに小さな割れ目ができてしまいます。活性酸素によって酸化された酸化LDLは、その割れ目から血管の壁の中へ取り込まれてしまいます。酸化LDLは、人間の体にとっては異物(外敵)です。その外敵を排除するために、体の防衛隊ともいえる免疫細胞(リンパ球や単球など)は、血管壁の中に突入し、酸化LDLを取り込んでいきます。

それと同時に、血管内皮細胞は、接着因子と呼ばれるICAM-1を出してきます。すると、免疫細胞は同じく接着因子のLFA-1を出し、血管内皮細胞から出ているICAM-1と結合。こうしてLFA-1とICAM-1が接着することによって、免疫細胞が活性化されます。活性化された免疫細胞は、次々と血管の壁の中に入っていき、酸化LDLを取り込んでいくのです。こうして、皮肉にも血管の炎症は激しくなっていきます。

また、LFA-1とICAM-1の結合によって刺激された免疫細胞と血管内皮細胞からは、サイトカインと呼ばれる刺激物質が分泌されます。このサイトカインは、免疫細胞を寄せ集める作用があるのです。その結果、さらに免疫細胞が集まってきて、血管の炎症はさらに激化することになるのです。どういうことかというと、血管の壁の中に侵入していった免疫細胞はさらに酸化LDLを取り込んでいき、やがて多くの免疫細胞はお腹がいっぱいになって破裂。血管の壁の中は、免疫細胞の多くの死骸によって、だんだんと膨らんできます。そのため血管の壁が厚くなり、そのぶん、血管内が狭くなってきます。これが慢性化することによって、血管壁が徐々にかたくなり、また厚くなってきます。その結果、血流が悪くなっていき、動脈硬化が進行していくのです。

 動脈硬化は加齢によって誰にでも起こるものですが、少しでもその進行を食い止めるには、大きく2つのポイントが挙げられます。ひとつは、酸化LDLの元となる、コレステロールの過剰摂取に気をつけること。もうひとつは、LFA-1とICAM-1の結合によって起こる炎症を少しでも抑えることです。

 なかでも、炎症反応の張本人である免疫細胞からLFA-1が出なければ、血管内皮細胞のICAM分子と結びつくことはありません。炎症を誘発する分子同士が結合しなければ、サイトカインなどの刺激物質が分泌されることはなく、血管内の炎症も起こりません。したがって、動脈硬化の進行も極力抑えることが期待できる、というわけです。

2.ポリアミンがLFA-1を抑える

動脈硬化は老化現象の一つですが、実際、加齢とともに免疫細胞のリンパ球から出るLFA-1は多いことがわかっています。また、最近では、加齢によるLFA-1の増加が遺伝子(DNA)レベルで生じている事も報告されています。

 このLFA-1を抑えることが、動脈硬化の進行を遅らせる意味で、非常に大きな意味を持っています。では、実際にLFA-1を抑えるにはどうすればいいのでしょうか。

そこで今、注目されているのがポリアミンという物質です。ポリアミンとは、約300年前に近くに発見された、さまざまな生理活性を持つ、低分子有機化合物です。もともとポリアミンは、すべての生物(微生物、植物、動物)の細胞内でアミノ酸から合成され、細胞の増殖や生存に必要不可欠なものです。しかし、加齢とともにポリアミンを合成する酵素の活性が低下し、体内のポリアミン濃度は減少していきます。

最近の研究により、そのポリアミンがLFA-1を抑えることがわかりました。前述したように、ポリアミンは体内で合成されますが、加齢とともにその量は低下します。

つまり、加齢とともに動脈硬化を促進するLFA-1は増加し、しかも、LFA-1を抑えるポリアミンは減少してしまうのです。または、ポリアミンの減少によってLFA-1が増加するとも考えられます。

そのポリアミンにはスペルミン、スペルミジン、プトレスシンの3種類があります。この中でも、最も強力にLFA-1を抑えるのが、スペルミンです。なお、スペルミン、スペルミジン、プトレスシン、いずれも、加齢とともに血液中の濃度は低下してしまいます。

LFA-1を抑え、動脈の炎症を極力ストップし、動脈硬化の進行を遅らせてくれるポリアミン。そのポリアミンは年齢とともに低下してしまいます。それを補給するにはどうすればいいのでしょうか。じつは、食品から補うことで不足したポリアミンを補うことができるのです。ポリアミンは消化管(胃や大腸)からの吸収がとてもよいことが実験によって立証されています。

ポリアミンを経口投与した場合、スペルミンは23〜30%、スペルミジンは32〜47%、プトレスシンの33〜43%は、最初の1時間で吸収されるのです。この結果、もちろん、体内のポリアミン濃度は上昇します。逆にいえば、加齢とともに体内でポリアミンの合成が低下してきても、食品からポリアミンを摂取することで、不足したポリアミンを補うことができるのです。

食品からのポリアミンの吸収度合い、LFA-1の抑制などを調べるために、次のような実験が行われました。 31名の被験者にポリアミンを多く含む代表食である納豆を1日3食、ある一定期間、食べてもらいました。その結果、ポリアミンの1つで最も強力にLFA-1を抑制するスペルミンの血液中の濃度は平均1.4倍、人によっては2倍近くまで高くなりました。さらに、スペルミンの血中濃度の高い人では、リンパ球のLFA-1の数は減少していたのです。

つまり、ポリアミンを摂取すれば、血液中のポリアミン濃度は高くなります。また、ポリアミン濃度が高い人ほど、免疫細胞から出LFA-1るLFA−1の量が少ないことがわかっています。この結果、年齢とともにポリアミンを多く含む、高ポリアミン食を積極的に摂取し、動脈硬化の予防・改善に努めることが、健康長寿の大きな鍵を握っている、といえるでしょう。

不足した体内のポリアミンを補給することを、「ポリアミンバランスを整える」といいます。ポリアミンバランスを整えるために、高ポリアミン食を摂取する必要があります。その高ポリアミン食の代表格ともいえるのが、納豆なのです。納豆に含まれるポリアミンは、ほかの野菜や肉類と比較しても多く、納豆を食べることで、ポリアミンを補給することができます。その結果、隠れ死因のワースト1でもある動脈硬化を防止することも十分期待できるはずです。また、ポリアミンには動脈硬化のほか、以下のような効果があることも多くの実験によって証明されています。

○制ガン効果 ○効エイズ効果 ○脳梗塞の抑制 ○効ストレス効果
○効アルツハイマー病/パーキンソン病 ○効アレルギー効果