1. トップ
  2. トピックス
  3. 胃がんのリスクが軽減

野菜や果物、乳製品に加え、
納豆を積極的に摂ると胃がんのリスクは軽減

 日本人に多い胃がんですが、食生活を見直すことで、防ぐことは十分期待できます。塩分の多いものを控え、野菜や果物を積極的に摂取することが胃がんの予防に有効なことがわかりました。それに加え、大豆イソフラボンを豊富に含む納豆にも胃がんなどのがんを防ぐ効果があります。こうした食生活を心がけて、限りなくがん死をゼロに近づけていきたいものです。

1.今でも日本人に多い胃がん

減少傾向にあるといわれますが、胃がんはいまだに日本人のがん死亡原因の上位に位置されています。1907年に遡ると、がんで死亡した男性の約60%が胃がんであったといいます。いわば、胃がんはがんの代名詞的な存在であったといっても過言ではありません。 しかし、胃がん検診の普及などにより、早期発見・早期治療が可能になったおかげで、徐々に胃がんによる死亡者数が減ってきました。93年には、男性に限ってではありますが、がん死亡原因の1位は肺がんとなり、胃がんは2位になりました。

とはいえ、依然として日本人の胃がんによる死亡率は、世界的に見れば高いほうに属します。日本の胃がん患者数は地域により差があり、秋田、山形、新潟など東北地方の日本海側に多く、西日本、特に沖縄は少なくなっています。これは食生活の影響、特に塩分の摂取量と関係すると見られています。興味深いことに、胃がんの発生率は、日本に住む日本人を100とした場合、ハワイに移住した日本人が70、アメリカ本土に移住した人が50と、日本から遠ざかるにつれ低くなるというデータがあります。

その胃がんの症状ですが、代表的なものが胸やけ、胃部不快感、食欲不振、体重減少、食べ物の好みの変化、貧血症状などがあります。

2.ビタミンCの多い食事が胃がんを防ぐ

胃がんに限ったわけではありませんが、食生活とがんは非常に深い関係にあります。つまり、食生活の傾向いかんで、胃がんになりやすくなったり、また、防いだりすることができるといえます。

実は最近、胃がんにまつわる興味深いデータが発表されました。結論からいいますと、干物や漬物など、長期保存できる、いわば日本の「伝統型」食生活を続けていると胃がんになりやすく、一方、野菜や果物、乳製品を積極的に摂取する「健康型」食生活では胃がんになりにくいことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎氏・国立がんセンター部長)の大規模調査で確かめられたのです。

研究班は1990年から全国14万人を対象に、食生活とがんの発生率の関連を追跡調査しました。このうち4万人についての解析では、約10年間で、男性2万300人のうち285人、女性2万1812人のうち115人に胃がんが発症しました。

食生活を分析すると、伝統型を好む人ほど胃がんになりやすいことがわかりました。そして、伝統型の頻度が少ない人と比べると、胃がんになる危険性は、男性で最大2.9倍、女性で2.4倍も開きがあったのです。健康型を好む人が胃がんになりにくい傾向は、特に女性に顕著で、危険性は最大で半分程度に下がったといいます。

ではなぜ、伝統型の食生活を続けると、胃がんのリスクが高まってしまうのでしょうか。伝統型の食生活は、塩分が多いのが特徴です。塩分の過剰摂取は胃がんの原因の1つだと考えられており、実際、かつて塩分摂取量が全国的に見て多かった東北地方では胃がんの発症率は高くなっていました。

一方、健康型の食生活は、ビタミンCが比較的多く含まれています。ビタミンCは免疫力を強化し、コラーゲンで細胞を守ることでがんを防ぐ効果があります。また胃がんや肝臓がんの原因の1つである、ニトロソアミンという発がん物質に反応して、無害な物質に変える作用もあるのです。

この調査の結果、誤解してならないのは干物や漬物などの伝統食が悪ということではなく、あくまでも塩分の過剰摂取がよくないということです。それに気をつけたうえで、ビタミンCを多く含む野菜や果物、乳製品などの健康食を積極的に摂取すべきでしょう。