1. トップ
  2. トピックス
  3. 1日1食の納豆が健康を維持

梅雨以降は、食中毒の季節
1日1食の納豆が健康を維持する

 梅雨の時期になると、気温や湿度が高くなり食中毒が心配になってきます。食中毒の発生件数は6月から増え始め、8月にピークを迎えます。特にここ数年は全国的な猛暑のため、食中毒の問題はいっそう深刻になってきました。食中毒を防ぐ基本は、加熱すること。それに加え、納豆を常食することで、あのO-157をはじめとする食中毒のリスクを大幅に減らすことができるのです。この夏の食中毒を防ぐキーワードは「1日1食の納豆」といえそうです。

1.梅雨から夏にかけて繁殖する食中毒菌

 食中毒の90%は、細菌が付着している食品に原因があります。私たちの体は多少の食中毒菌であれば、それを排泄する機能を備えています。しかし、細菌の数が増加すると、排泄機能にも限界が生じ、食中毒を起こしてしまうのです。

 特に注意したいのは、梅雨から夏場にかけての季節。細菌にとって最も過ごしやすいと言われる25〜35℃の温度になり、湿度も高くなるために食中毒菌は繁殖しやすくなります。細菌による食中毒は臭い、味、色などが変化しないので、五感では判断がつきません。ですから、どんな食品にどのような食中毒菌が付きやすいのか、そしてどのような対処をしていけばいいのかを知っておくことが大切になってきます。では、食中毒を引き起こす、代表的な菌をいくつか見ていきましょう。

 おにぎりやサンドイッチなど、食べるときや調理するときに直接手で触れる食品につきやすい細菌は「黄色ブドウ球菌」です。この細菌は人間や動物が持っている菌で、それが食べ物に移ることによって食べ物を栄養にして繁殖していき、増えている間に毒素が発生します。

 魚介類や生ものに付きやすいのは「腸炎ビブリオ」、カレーやシチューなどの煮込み料理に付きやすいのは「ウェルシュ菌」です。こういった菌は体の中に入ってから菌が増えて症状が出てきます。

 菌の数が少なくても食中毒を起こしてしまうものには、卵に含まれる「サルモネラ菌」、鶏肉に含まれる「カンピロバクター」などがあります。こういった食材を使うときは、鮮度などに気を使うことが必要です。

 そして近年、脅威となっているのが、大腸菌の一種「O−157」です。大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうちいくつかのものは下痢などの消化器症状や、合併症を引き起こすものがあり、それらは病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌の中には、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群を引き起こす、腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。O-157はこの腸管出血性大腸菌の一種で、毒素により出血性腸炎を起こすことから、正式には「腸管出血性大腸菌O-157」と呼ばれています。

 O-157の感染経路は通常の食中毒と違って、経口感染により人から人へ感染する場合があるので、手をよく洗うなど、衛生面における注意が特に必要です。また、O−157は様々な食品や食材から見つかっていますので、食品の洗浄や加熱など衛生的な取り扱いも慎重にならなくてはいけません。

 O−157はサルモネラや腸炎ビブリオなどの食中毒菌と同様に加熱や消毒薬により死滅します。したがって、通常の食中毒対策を確実に実施することで十分に予防可能です。

 なお、いずれの食中毒菌も、基本的に加熱には弱いというのが特徴ですが、加熱をすれば100%大丈夫というわけではありません。O-157をはじめ、多くの食中毒菌は75度で1分間以上加熱すれば、99.9%は殺菌できます。しかし、カレーやシチューなどの煮込み料理に付きやすい「ウェルシュ菌」などは、芽胞(がほう)と呼ばれる堅い殻を作って身を守るという特徴を持っています。芽胞は100度の熱でも死なないため、加熱をしても25〜30度の常温に置いておくと、芽胞で保護されていた菌が再び活動を始め、時間が経つにつれ、細菌が倍に倍にと繁殖していきます。こうなると、翌日に温めなおしても、菌の量が多くなりすぎているため、殺菌しきれずに食中毒を起こしてしまいます。

 また、食品に付着してから毒素を作る「黄色ブドウ球菌」は、菌そのものが加熱で死んでも作り出された毒素は100度の加熱でもなくなりません。大量の菌が毒素を作り出していれば、温めなおしても食中毒を起こしてしまうことがあります。

 食中毒を予防するには、菌を“つけない”、“増やさない”、“殺菌する”という三原則が大切です。特に大切なのは加熱で行う“殺菌”で、75度で1分間以上加熱するようにしましょう。加熱の際に大切なのは、加熱ムラをなくすということです。ただ、電子レンジでの加熱は、容器に接している部分が十分に加熱されていないことがあります。加熱ムラをなくすために、途中でかき混ぜながら全体が十分に加熱されるようにしましょう。

 ただし、加熱殺菌には先ほども説明したように限界があります。そこで大切になってくるのが、菌を食材に“つけない”ことです。他の食材と接触して菌を移さないようにすることも大切です。流水でよく洗って菌を落としましょう。そして、最後に菌を“増やさない”ことです。例えば、カレーなどは加熱したものをそのまま常温に置いておくと菌は増殖していくので、小分けしてすばやく冷ましましょう。但し、冷蔵庫(10℃以下)の場合、菌はゆっくりと繁殖してしまいます。菌は−15℃で活動が停止するので、冷凍庫で保存する方がよいでしょう。解凍する場合は、電子レンジですばやく行うか、冷蔵庫でゆっくりと行うようにしてください。常温で解凍すると、中は凍っていても表面部分が常温に触れるため、菌が繁殖してしまいます。

2.納豆が食中毒菌を撃退する

 さまざまな健康効果のあることが知られてきた納豆ですが、食中毒の予防もおおいに期待できます。1日1〜2食、納豆を食べるだけで、あのO-157にも有効に働いてくれるのです。

江戸時代の食べ物辞典に、納豆に関する興味深い記述があります。それによると、納豆は「毒を消して食をすすめる」と記されています。「毒を消す」というのは、抗菌性があるということを意味します。

それを裏付けるかのように、納豆にはすぐれた抗菌性があることがわかっています。たとえば、倉敷芸術科学大学の須見洋行教授によって、あのO-157に対しての納豆の有効性もわかりました。納豆に含まれている、ジピコリン酸がO-157を抑制してくれるのです。O-157を予防するためには、毎日1〜2パックの納豆を食べることが望ましいといえます。また、納豆は悪い菌は抑えますが、乳酸菌のような良い菌に対しては増やすように働き、整腸効果があるといったことも判明しています。つまり、食中毒を引き起こす悪玉菌は抑え、人体に好影響を与える善玉菌は増やしてくれるのです。

ジピコリン酸以外にも、納豆には食中毒を予防する多くの成分が含まれています。順に見ていきましょう。

リゾチーム
 リゾチームとは、病原菌溶解酵素の1つで、涙や尿、母乳などに含まれており、細菌から体を守ってくれます。卵白や植物の分泌物や組織にも含まれていることは知られていましたが、この酵素が納豆の中にも含まれていることが倉敷芸術科学大学の須見洋行教授によって発見されています。納豆にはリゾチームが豊富に含まれ、数々の食中毒菌による感染を予防してくれるのです。

納豆菌
 あまり知られていませんが、納豆菌には強力な抗菌作用があります。O-157をはじめ、チフス菌や赤痢菌、サルモネラ菌などを抑制。それだけでなく、納豆菌は腸内では腸内細菌の善玉菌と同じような働きをし、善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えてくれるのです。

たんぱく質
 たんぱく質は全身の細胞の材料であり、不足すると細胞の新陳代謝が低下しやすく、病原菌などに打ち勝つための免疫力が落ちてしまいます。それを防ぐためにも、たんぱく質の摂取は必要不可欠。なかでも納豆のたんぱく質は消化、吸収がよく、免疫力を高める効果があります。

ビタミンB1
 糖質をエネルギーに変えるための役割を果たしています。エネルギー量が増えれば体力がつき、免疫力もアップ。ただ、ビタミンB1は体内では1日ほどしか保持されません。納豆で毎日摂取することが望ましいといえます。

亜鉛/マグネシウム
 細胞内で新陳代謝が行われる際、酵素によって化学反応が起こっています。それを助けるのが、亜鉛やマグネシウムなどのミネラル成分。また、体が細菌やウイルスと闘っているときには、多くのミネラルが消費されます。細胞の新陳代謝を促進したり、細菌などの外敵から身を守ったりするためにも、亜鉛やマグネシウムなどのミネラル成分の摂取は必要不可欠になります。

イソフラボン
 イソフラボンとは大豆に含まれている女性ホルモンに似た成分です。大豆を発酵させると、アグリコンという成分に変化します。イソフラボンとアグリコンは免疫力を増強し、食中毒菌などから身を守ってくれるのです。

レシチン
 食中毒菌など悪玉菌は、人体にとって有害物を産生することがあります。それを無毒化してくれるのが、レシチン。納豆は消化、吸収にすぐれ、悪玉菌による有害物も速やかに無毒化してくれることが期待できます。

サポニン
 サポニンは免疫細胞のエサとなります。その結果、免疫細胞の働きが活性化。悪玉菌やウイルスなどに対する抵抗力も高まるというわけです。

 このように、納豆には食中毒を防ぐ成分が豊富に含まれています。O-157による感染を防ぐためにも、食品の管理はもちろんのこと、1日1食の納豆を実践し、暑い夏を元気に乗り切りましょう。

3.納豆と梅の冷やしソバで食欲アップ

免疫力を高めて食中毒も防止!

納豆と梅の抗菌作用によって、
体内の悪玉菌を撃退し、健康を保つ
ポリアミンが健康体を築く


 納豆だけでなく、梅にもすぐれた抗菌作用があります。両者を合わせて、そばにして食べれば、食中毒対策もOK。さっぱりと食感で食欲もそそります。

●材料(1人分)
そば(乾麺ベース) ……150g
納豆 ……1パック
練り梅 ……小さじ2
麺つゆ(希釈後) ……100ml
浅葱、ワケギ ……適量

●作り方
(1) ネギは適当な大きさに刻む。納豆は挽き割り、もしくは事前に包丁で軽く叩いておくと、からみやすい。

(2) 麺を茹でる。器に麺つゆ、練り梅、納豆を入れ、泡立てない程度にかき混ぜて馴染ませておく。

(3) 茹であがった麺を冷水に取り冷やし、水気を良く切って(2)と和える。しっかり絡んだら納豆が上のほうに来るように大きく混ぜ返し、上からネギ、その他薬味をかけて出来あがり。薬味は海苔、おろし、ワサビなどお好みで。刻んだオクラ、トロロでネバネバをつけてもおいしくなります。