1. トップ
  2. 納豆百科事典
  3. 「大豆」は万能の“薬”だった

納豆発展の歴史

「大豆」は万能の“薬”だった

健康を保つには、決して「薬」だけに頼ってはいけません。朝、昼、晩と一日に3回食べる「食事」のことなのです。
世界中で、人生の持ち時間が、もっとも長いのは日本人。つまり、日本人は世界で一番長生きしているということです。しかし、いくら長生きしても、ボケたり、寝たきりになったりして、人間としての尊厳を失ってまで、いたずらに生き長らえることを望む方は、少ないのではないでしょうか。

そのために、何よりも重要なのは、食事なのです。中でも、大事にしてきたのが「大豆」。日本人にとって、大豆はカルシウム・ビタミンも含んだ綜合栄養素であり、万病から健康を守ってくれる、魔法のような「力」を持った食べ物でした。
少なくとも、古代の日本人は、そのような考えを持っていたのは、平安時代の医術書として有名な『医心方』を見れば、よく理解できます。大豆の効能について、次のように述べているのです(分かりやすく箇条書きにします)。

「大豆」は万能の“薬”だった

● 蒸したり、煮たりして食べれば、その働きは米に勝る。

● 煮豆をはじめて食べたときには、体の動きが重いように感じられるが、一年もたつと軽やかになって、房事(セックス)がよくなる。

● 炒って粉(きな粉のこと)にしたものは、味は甘く、胃の調子をよくし、むくみをとり、麻痺を除く。

● 炒った熱い大豆を酒に入れ、これを飲めば中風などの治療に役立つ。

● 煮豆を汁ごと食べると、いっさいの体の毒気を除く。

● 大便の通りをよくし、腹のしこりを防ぐ上で役に立つ。

奈良時代、脚気にかかって寝起きも不自由になった僧が、「薬」にしたいから、大豆を一升ばかり支給して下さいと、役所に請願した文面が残っています。

「足病起、不便起居」というもので、あきらかに脚気。大豆には、脚気に効果の高いビタミンB1をはじめ、他のビタミンやミネラル、さらにはレシチンやサポニンといった成分も多く、体力回復にも効果が上がっていた筈です。