納豆は、大豆に納豆菌を植え付けた食品です。
そもそも大豆は、中国原産の植物でアジア地域に自生しています。大豆が生育するためには、土の中に根粒バクテリアという菌が必要ですが、ヨーロッパやアフリカなどには適切な菌がいないため、大豆は育つことができません。
一方、納豆菌は豆類に繁殖します。その中でも大豆をもっとも好み、ほかの豆に植えた時とでは発酵のスピードも違います。すなわち、大豆と納豆菌の組み合わせによる「納豆」という食品は、私たちの風土が育んだ自然食品なのです。
日本の風土に適合した食品であるため、納豆を生産するには、特別な設備や材料は必要としません。衛生管理と、温度管理さえしっかりしていれば、どこでもおいしい納豆を作ることができます。
しかし、現在のような納豆の生産体勢が誕生したのは、大正時代になってからのことでした。それまでは「藁づと」を使って発酵させていたため、消費者からは衛生面に対する信頼性が今一つでした。
そこで北海道大学応用菌学教授の半沢洵博士が、純粋培養した納豆菌を使って、衛生的な容器で納豆を作る方法の普及に乗り出し、それが現在の生産体勢の基盤となっています。大豆は栽培が容易な上、生育が早く、中国やアメリカなどでも栽培が行われて輸出されています。
また、1俵60Kgの大豆から、100g換算で1,000個以上作ることが可能なのです。
低コストの材料、生産に適合した風土、近代的な大量生産技術、そして豆の選別から出荷までわずかな日数でできる効率的な工程。 こうした好条件が組み合わされた結果、毎日食べても家計に負担をかけることのない価格で、納豆は食卓に上っています。これほどの栄養価を持つ食品を、これほど安く手に入れることができるのは、奇跡的なことかもしれません。