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納豆とは、「煮た大豆の表面に納豆菌が増殖し、『納豆の糸』といわれる独特な粘質物ができるとともに、納豆特有の風味を生じた食品」と言えると思います。納豆菌は増殖するときに、大豆のタンパク質を分解し吸収しやすくするとともに、各種ビタミンや酵素類などを作り出し、栄養に富んだ食品にします。
納豆の発酵は、味噌や醤油などと異なり、短時間です。納豆の発酵は開始からおよそ20〜22時間程度で終わります。製造開始から出荷まで最短で3日程度です。 それでは、納豆の製造工程についてご説明いたします。


原料大豆

納豆用大豆には粒の大きさが極大粒から極小粒までいろいろな種類がありますが、小粒、極小粒が多く使われています。小粒、極小粒の納豆が好まれるのは、ご飯の粒と納豆の粒の大きさに差が少ないため、ご飯にからみやすく、口当たりが良いためと考えられます。また、大豆の粒が小さくなればそれだけ豆の表面積が大きくなるため、納豆菌がつくる粘質物や旨味の量も多くなり、味も良くなると考えられます。

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納豆用大豆(乾燥した大豆)

洗浄

原料大豆はまず、選別機械により、虫食い豆、割れ豆、着色豆や異物が取り除かれます。そのあと、豆洗い機によって、大豆種皮に付着している土や細かいゴミなどが水で洗い流されます。

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浸漬(しんせき)

きれいに洗った大豆は水に浸されます。この作業を浸漬と呼びます。大豆に水を十分に吸収させることで、次の蒸煮工程で熱の通りを良くし、煮豆の風味や固さなどを均一に仕上げることができます。
十分に水を吸わせると、もとの大豆の2〜2.3倍くらいの重さになります。

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十分に水分を含ませた納豆用大豆

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    浸漬前の大豆

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    浸漬後の大豆

浸漬時間は、水温によって大きく変わります。冬は水温が低いため、15度程度であれは17〜18時間くらいが目安。夏、水温が25度くらいになった場合は7〜8時間くらいが目安とされています。水は多め(大豆の重さの三倍程度以上)の方が良いとされています。浸漬時間は大豆の品種や粒の大きさによっても調節します。

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    水が注がれ浸漬される

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    浸漬される納豆用大豆

蒸煮(じょうしゃ)

大豆は十分水を吸わせた後、高圧の圧力釜で蒸しあげられます。

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蒸煮釜と言われる高圧力の釜

蒸煮によって、大豆は柔らかくふっくらとした煮豆に仕上がり、納豆菌が栄養を取りやすく、増殖しやすい環境になります。また、蒸煮することで、納豆菌がつくりだす様々な酵素類が浸透し、大豆の成分を分解しやすい状態になります。
蒸煮の時間や温度は、各納豆メーカーが良い煮豆をつくるため大豆の品種や産地によって条件を工夫しています。

納豆菌噴霧

純粋培養した納豆菌を蒸煮後の煮豆に噴霧して煮豆の表面に付着させます。雑菌の混入を防ぐために、煮豆の温度が70〜90度くらいで接種するのが理想的です。

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    水に入れた納豆菌を噴霧し、大豆に接触させる

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発酵容器充填

発酵容器には発泡スチロール、紙カップ、ポリ袋、経木などがあります。いずれの場合も納豆菌の噴霧工程と同様、雑菌の混入を防ぐために、煮豆が熱いうちに充填を終わらせるよう注意します。
納豆菌は増殖に酸素が必要です。そのため、空気の通りを良くし納豆菌の繁殖を旺盛にするために、大豆をあまり強く抑え込まずに盛り込み、豆の間に適度な隙間があるようにします。市販の納豆の容器の底面が凸凹になっているのも、こうした工夫がなされている証拠です。

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手作業で容器に盛り込む

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PSP容器に盛り込まれる

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    藁苞に手作業で盛り込まれる

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    経木に手作業で詰め込まれる

発酵

発酵容器に盛り込んだ大豆を発酵室に入れ38〜42度で16〜24時間じっくりと寝かせ、発酵させます。

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    各発酵室は厳しく温度管理されている
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    発酵室に整然とならぶ納豆

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発酵室に積まれる藁苞納豆

16〜24時間経過後、発酵室から全製品を室外に出し製品の温度を下げて発酵を止めるとともに、除湿を行います。発酵容器内に納豆菌がつくりだした代謝ガスを取り除く効果もあります。製品の温度が室温程度まで下がったら冷蔵室に移します。

発泡スチロール容器に比べ保温性に劣る、紙カップ、ポリ袋、経木などの容器では発酵するときに納豆菌がつくりだす熱が容器の外にもれるため大豆の温度があまりあがりません。そのため、納豆菌の増殖も悪くなり、作り出した酵素もうまくはたらかず、十分な発酵が行われません。
そこで、発酵容器によって、発酵室の温度、湿度を調整しています。

熟成

発酵後の納豆は室温程度まで製品の温度が下がった後に冷蔵し、発酵で増えた納豆菌を休眠させます。これを熟成といいます。
熟成は、通常5度以下の低温で行います。そして、包装や仕分け作業中にも納豆菌の再繁殖が起こらないよう、品温の上昇には十分に注意を払います。納豆がうまくできるかどうかは、発酵から熟成までの、この温度管理にあるといってもよいでしょう

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冷蔵熟成され、包装、出荷を待つ納豆



包装

容器に詰められ、熟成を終えた納豆はラベルをかけて出荷されます。発泡スチロール容器では2〜3段重ね、カップ容器では3個入りのシュリンク包装が主流です。
包装された製品はダンボール箱に詰められ、再び冷蔵庫で出荷を待ちます。

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最終出荷を待つ納豆

出荷

新鮮で安全な納豆を冷蔵車で小売店などに納品します。納豆メーカーの工場では、納豆を生産する上で、温度管理を徹底しています。出荷準備にある商品の冷蔵にも再発酵しないよう、とても注意をはらっています。
また、輸送途中でも品温が上昇すれば、納豆菌が再び活動をはじめ、アンモニア臭が発生するなど品質が劣化します。そこで輸送には冷蔵車や冷凍車を使い、商品の品質を劣化させないよう、細心の注意をはらい皆様のお手元にお届けしています。

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    冷蔵ケースに並ぶ納豆

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    おなじみの納豆売り場