全国納豆ファンの皆様こんにちは!
納豆大好き夫婦のリョウタ & トモコです!
納豆写真家の夫リョウタと食いしん坊OLの妻トモコが、日本全国に伝わる美味しい納豆食文化を紹介する『ニッポンおいしい納豆地図』
今回は千葉県銚子市の納豆グルメをご紹介!
銚子市は、水揚げ量日本一の銚子港を有する水産都市。古くから醤油の生産が盛んで、 日本の五大醤油会社に入る「ヤマサ醤油」と「ヒゲタ醤油」の本社があることでも有名だ。 そんな銚子市に『銚子を丸ごと楽しめる納豆料理』を出すお店があると聞きつけた僕 たちは、早速取材を開始した。
トモコ「着いたー!駅前からもうなんだか海の香りがするね!銚子港でお魚食べに行こう!」(調査そっちのけではしゃぐトモコ)
リョウタ「魚もええんやけど、今日は納豆に欠かせない醤油について徹底的に調べようと思ってるんや」
トモコ「え?醤油!?」
訝しがる妻を連れて銚子鉄道に乗り込み、僕たちは仲ノ町駅へ向かった。
リョウタ「一両編成か!銚子鉄道は鉄道ファンにはたまらないんやろなぁ」
トモコ「あ!なにあれ!!」
妻が窓の外に何かを見つけて大きな声を上げた。
トモコ「さっき見た大きな煙突!」
リョウタ「ここがヤマサ醤油第一工場や」
ヤマサ醤油工場のトレードマークの巨大煙突。時間によっては辺り一帯が醤油製造時の蒸気でいっばいになる。昔から続く銚子の情緒ある風景のひとつだ。
トモコ「そんなの毎日眺めてたら、ずっとお腹空いちゃいそう笑」
銚子の醤油の歴史は古く、醤油の製造が始まったのは江戸幕府が開かれて間もない1600年代前半。紀州から伝わったとされる。当時イワシ漁が盛んだった紀州の漁民達が漁場を求め黒潮に乗り、銚子にたどりついて漁港を開いた。間もなく銚子はイワシ賑わう一大漁港になった。その時蓄えられた資金を元手に醤油醸造業が創業され、江戸へ新鮮な魚と共に醤油も運ばれることになったのだ。
トモコ「へー!銚子港と醤油製造は、持ちつ持たれつなんだね!」
江戸時代から続く銚子の醤油製造。
リョウタ「昔の人も納豆に醤油かけてたべてたんなぁ」
大きな醤油工場の煙突を前に、僕たち二人は銚子の納豆料理への期待を大きく膨らませた。
目的のお店に行く前に、醤油のルーツを調べることに。
リョウタ「ここが『銚子山十商店』や」
トモコ「歴史を感じる店構えね」
『銚子山十商店』は創業400年の醤油蔵。創業はヒゲタ醤油やヤマサ醤油と同時期の1630年で、紀州から来た地主が開業したとされる。
店主「日本の醤油の起源は金山寺味噌という保存食から生まれたと言われてるんです」
鎌倉時代に紀州(今の和歌山県)の僧侶が野菜や大豆や小麦を米麹で発酵させて味噌のような保存食を作っていた。ある時、作ってから時間が経った金山寺味噌の上に、黒い液体が滲み出ているのを見つけた。それを僧侶が舐めてみたらとても美味しかっ
たので、それを調味料として使い始めたのが醤油の起源だと言われている。
トモコ「味噌の上澄み液から偶然生まれたのね!」
山十の名物のひしおは大麦と大豆を発酵して作られる発酵調味料。文献では日本で奈
良時代(!)から作られていたともされ、醤油よりもさらに歴史が古い。金山寺味噌と異なり、100% 発酵させるのでひしおは醤油の分類に入るのだそう。その点でひしおは本当の意味で醤油のルーツと言えるのかもしれない。
店主「ひしおは醤油蔵では昔から賄いとして食べられていたそうですよ」
それを『銚子ひ志お』として製品化したところ「食べる醤油」として全国で評判になり、今では赤坂離宮からも注文が入っているのだそう。
リョウタ「一体どんな味なんだろう。お土産に買って帰ろう!」
銚子山十のすぐ裏手に目的のお店はあった。
リョウタ「ついたー!」
トモコ「凄く綺麗なお店!これお蕎麦屋さん!?」
『そば口福加満家』は、銚子を代表する老舗のお蕎麦屋さん。
加満家本店から暖簾分けされて以来130年(!)もの長い間、地元で愛され続けてきた名店だ。20 年前に店名を『そば口福 加満家』に改名し、昨年には店内をリニューアルして営業している。
暖簾をくぐるとその華やかさに驚く。
天井も高く広い店内には、至るところに植物が飾りつけてある。片側の壁がガラス張りになっている為、外の光がはいって店内がすごく明るい。
リョウタ「素敵な内装やな!ここが銚子ってことを忘れてしまいそうや!」
トモコ「お、お洒落すぎる!わ、私ネイル塗り直さなきゃいけないかしら、、お、お手洗いいっててこようかな、、」
急に緊張してモジモジしだした妻を横目にメニューを開く。
『納豆』の文字をさがして、、、あった!!
『まぐろ納豆丼』
そう来たか!
新鮮なマグロと納豆のアンサンブル、美味くないはずが無い!早速注文することに。
リョウタ「注文いいですか?まぐろ…」
トモコ「まぐろ納豆丼2つください!!!!」
いや急に元気。妻は美味しい食べ物を前にすると何もかも吹っ切れてしまうらしい。
トモコ「あ、ひとつは大盛りで!」
大盛りにするんかい。
目の前で作り方を見せて頂いた。
具材は、ひきわり納豆、まぐろのすき身、納豆、卵黄、青ネギ、長ネギ、大根おろし、刻み海苔、山葵。
あつあつご飯に順番にご飯に乗せて、海苔を散らせば、、、
完成!!!
う、美しすぎる!
ネギの緑、卵の黄色、まぐろの赤。まるで絵画のようだ。
興奮して何度もシャッターを切る僕。
リョウタ「きっとこれは銚子の全てを表してるんや!納豆が陸。まぐろは海。その真ん中にある卵黄は…そうか!これは水平線に沈みゆく夕陽を表している!! ん?ということは大根おろしの『白』は……」
トモコ「もういいよ!!早く食べようよ!マグ様に失礼でしょ!」
待ちきれない様子の妻。いつの間にかマグロ納豆丼を“マグ様" と崇めだしている。
店主「自家製のだし醤油をかけて、豪快に混ぜて食べてみてください」
黄身を崩して、、醤油をかけて、、混ぜて、、、
リョウタ & トモコ「いただきまーす!」
う、う、う、美味いーー!!!
口に入れた瞬間、まぐろの旨味とだしの効いた醤油の香りが口いっぱいに広がる。
ひきわり納豆のコクとマグロの爽やかな油で、全体は想像していたよりもずっと濃厚な味わいだ。
トモコ「ほんと濃厚で豪華な味ね!まぐろ丼っていうよりもはや海鮮親子丼って感じ!?」
卵黄とマグロのトロトロ感と納豆のネバネバの中で、粒だったお米がホロリとほぐれて噛む度に幸せな気分になる。
トモコ「それに長ネギと大根おろしがいいアクセントになってるわ」
食べ進めていくうちに、長ネギのシャキシャキと大根おろしの辛味がまた次の一口を誘って、レンゲが止まらない。まぐろ納豆は組み合わせによっては生臭くなってしまうことも多いが、この丼にはそれが全く無く、見事に調和している。
店主「だし醤油は自家製で、サバ節やカツオのだしにヒゲタの本膳とヤマサ醤油を調合しています。あえて少し甘めにしてあるんですよ。」
そうか!この尖りの無いだし醤油のおかげで、個性の強い具材達がまとまっているのか!
リョウタ「銚子を代表する二大醤油が、銚子の恵みを包みこんでいるんですね」
トモコ「まさに銚子を丸ごと楽しめる丼ね!おかわりは洗面器で食べたいです!」
妻よ、真っ直ぐな瞳でなにを言うてるんや。
続いて「試作段階で今はただの賄いメニューなんですが、、」と店主が出してくれたのはなんと!銚子山十の『ひ志お』を使った納豆ご飯!!
リョウタ「やったー!納豆と食べてみたかったんですよ!」
トモコ「いただきます!」
口に入れた瞬間、ひしおの熟成された醤油の香りが鼻に抜ける。
それから粗く残った大豆の粒を噛むと、味噌のようにコクのある濃厚な醤油の味わいが口いっぱいに広がる。
トモコ「ひしおって凄く香り豊かでワインみたいに芳醇ですね!」
ただの納豆ご飯がなんだか高級料理に感じてしまうほどだ。
加満家5代目店主の助川喜久(すけがわよしひさ)さんにお話しを伺った。
リョウタ「まぐろ納豆丼はどうやって生まれたんですか?」
助川さん「若い頃修行していた蕎麦屋で出していたメニューなんです」
東京の元代々木にある蕎麦の名店「大野屋」での修行時代に、ランチでそばとセットで出していたまぐろ納豆丼に感銘を受けたのがキッカケなんだそう。
助川さん「実は銚子の人って、お刺身をあまり外で食べないんですよね」
銚子は新鮮な魚がいつでも安く手に入る。美味しい刺身は家でいつも食べられる為、地元の人はわざわざ外食でお刺身を頼む人は少ないんだそう。しかし単なる海鮮丼ではなくまぐろ納豆丼なら、栄養価も高く満足感もある為、銚子でもメニューとしてい
けるのではと考えたのだそうだ。つゆを調整し、薬味を変え、試行錯誤の末に今の形にたどり着いた。今では加満家の人気メニューのひとつになっている。
リョウタ「助川さんは店内をモダンにしたり、かたや伝統的なひしおを使った新メニューを考えたりと積極的に色んなものを取り入れてますよね」
助川さん「メニューもそうですけど、先代から受け継いだ伝統的なものを壊さずに、新しいものも取り入れて進化していきたい。そしてこの銚子全体を盛り上げていきたいですね。」
歴史ある醤油の街で出会ったお洒落なお蕎麦屋さんの『まぐろ納豆丼』は、まさに銚子の「伝統」と「今」が混ざり合った最高の一品だった。
トモコ「さっき写真撮ってる時、話止めてごめんね。」
リョウタ「いいよ笑」
トモコ「あ、さっきの大根おろしの『白』が何なのかわかったよ」
リョウタ「え?」
トモコ「きっと醤油工場の蒸気を表してるのよ」
バター風味の納豆オムレツに出会って以来、 納豆の魅力に取り憑かれ新しい納豆料理を探す日々。 納豆への愛が日々強まり続けた結果、 日本独自の食文化である納豆が全国各地の特色と 混ざり合うことで、どのような形になっているのか を後世に伝える「納豆写真家」!? ライフワークは終わりなき納豆の可能性の探求。 まさに、「ねば〜エンディングストーリー」!
東京出身で一見どこにでもいるような普通のOL。 しかしその実態は、納豆のみならず食べることに 命をかけている納豆美人!美味いものがあると聞 くと、九州だろうが東北だろうが新幹線に飛び乗っ て、日本各地どこへでも旅立つ。 名言のひとつに「美味しいものを食べ尽くすには、 日本の有給は少なすぎる」がある。 『納豆女子コンテスト』で最終選考まで残った? という経歴の持ち主。リョウタの自慢の妻である。