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ビールの原料ホップに胃潰瘍予防効果!
納豆をおつまみにすれば、相乗効果期待大

 日本人の感染率が高い、ピロリ菌。そのピロリ菌は胃潰瘍や胃ガンなどの原因になりかねません。ピロリ菌に感染している人は薬で除菌することが望ましいですが、日常的に食生活に気を配ることも大事です。 このほど、ビールにピロリ菌の働きを阻止する効果があることがわかり、大きな反響を呼びました。また、納豆は8つの有効成分の相乗効果により、ピロリ菌を抑えるなど胃の調子を整えてくれます。さらに、同じくピロリ菌を抑制するジャガイモのすりおろしと納豆を合わせて食べることで、その効果はさらに高まります。

1.ホップポリフェノールがピロリ菌の悪事を阻止

 花見の季節が到来し、ビールがおいしい季節が近くなってきました。そのビール、何かと健康の悪者にされがちですが、決してそうでもありません。もちろん、飲み過ぎは厳禁ですが、注目すべき健康効果が判明しました。

 ビール原料のホップから抽出した「ホップ・ポリフェノール」が、胃潰瘍の発症、胃ガンとの関係も指摘されているピロリ菌の毒素を弱めることが、千葉大大学院医学研究院とアサヒビール(本社・東京)の共同研究で明らかになりました。この研究成果は、2005年4月4日から東京都内で開かれた「日本細菌学会総会」で発表されました。

 研究グループは、ヒトの細胞を使った実験で、ピロリ菌の毒素にホップ・ポリフェノールを添加して培養すると、添加しなかった場合に比べて、細胞の損傷が10分の1以下に抑えられることを確認しました。

 研究グループの野田公俊教授(病原分子制御学)は「ピロリ菌の毒素とホップ・ポリフェノールが結合し、毒素が胃壁に付着できなくなる」と説明しています。この研究により、適度なビールは、ピロリ菌の毒素を弱めることがわかりました。ただ、どの程度のビールを飲めばよいかということは、今後の研究を待つしかありません。とはいえ、悪玉にされがちなビールにピロリ菌の悪事を抑える効果が判明したのは、とても興味深い事実です。

2.胃ガンなどの大きな原因となるピロリ菌

 ピロリ菌の正式名称は、ヘリコバクター・ピロリ菌です。毒素が胃壁に付着することで急性胃炎や胃潰瘍を引き起こします。日本では約6000万人が保菌者とされており、年齢が高くなるほどその割合は増加。中高年以上のかたは決して他人事ではありません。では、私たちの健康を脅かすピロリ菌とは、いったいどんなものなのでしょうか。簡単に見ていきます。

その1 ピロリ菌とは?
 1980年代に発見された細菌で、人間の胃の中に生息し、胃の粘膜障害を引き起こす原因として注目されています。日本人はピロリ菌に対する高い感染率が認められています。特に40歳代以上の人では感染率が高く、戦後の悪い衛生状態(上下水道など)がその原因と考えられています。

 では、ピロリ菌はなぜ胃の中で生きていけるのでしょうか。胃の中はpH1〜2と非常に酸性が強く生物が生きていけるような環境ではありません。しかし、この細菌はウレアーゼという酵素を多量に持っており、これを使って胃の中にある尿素をアンモニアに変化させます。このアンモニアが胃酸を中和し菌の周囲のpHを変化させて、生存できる環境を作り上げているのです。いわゆるバリヤーを張っていると考えてください。ピロリ菌とは、このように非常に進化した細菌なのです。

その2 消化性潰瘍との関係
 ピロリ菌は消化性潰瘍(胃潰瘍や十二指腸潰瘍)発生の原因として重要であることがわかり、ピロリ菌を除菌することにより潰瘍の再発率が低下することが判明しました。わが国でも、2000年11月よりピロリ菌の除菌療法が保険適用となりました。消化性潰瘍の再発を繰り返している人や内服治療を続けている人はピロリ菌の除菌を行うことにより今までの維持療法や再発から解放される可能性があります。

その3 胃ガンとの関係
 ピロリ菌の感染により慢性胃炎を生じ、そこから胃ガンが発生する考えられています。ピロリ菌感染者には胃ガンの発生率が高いという疫学調査のもと、1995年WHOにおいてピロリ菌は胃ガン発症の危険因子に指定されました。胃ガンに対する予防的な除菌療法は今のところ、わが国では保険適用とはなっていませんが、今後一般化されていくものと考えられます。

その4 慢性胃炎との関係
 慢性胃炎はピロリ菌の持続感染によっておこります。胃がもたれる、胃が重いなどの症状を伴う場合、除菌を行うことにより症状が改善する可能性があります。ただし、除菌を行ってもまったく症状がとれないこともあります。現在、慢性胃炎に対する除菌療法は保険適用にはなっていません。慢性胃炎に対する除菌療法の効果や副作用などを十分理解のうえどうしても除菌を希望される場合は自費診療となりますが、治療は可能です。

3.8つの作用で胃を守る納豆パワー

 ビールにピロリ菌を撃退するパワーがあることは、前述した通りです。それに加え、納豆にもピロリ菌撃退をはじめ、胃の健康を守る効果があります。それを順に見ていきましょう。

その1 納豆抽出液
 納豆といえば、ナットウキナーゼ、イソフラボンといった有効成分が有名ですが、それ以外でも大きな効果を持つ成分がわかりかけてきました。納豆研究の第一人者である倉敷芸術科学大学の須見洋行教授は、ある種の納豆菌抽出液中にピロリ菌に対する強力な抗菌活性を確認しました。その活性は臨床薬であるメトロニダゾール(ピロリ菌を高確率で除菌する薬)にも劣らないといいます。もちろん、納豆を食べることで少なからず、ピロリ菌の活性を抑えることが期待できます。

その2 たんぱく質
 人間は約60兆個の細胞から構成されています。当然、胃や十二指腸などの臓器も、細胞からできているわけです。その細胞は、たんぱく質によって構成されています。実は、納豆にはたんぱく質を構成するアミノ酸20種類のうち、18種類が豊富に含まれています。しかも体内での吸収がよいため、効果的に潰瘍などで傷ついた細胞を回復させてくれるのです。

その3 ビタミンB1
 胃潰瘍などはストレスなどが蓄積してくると、悪化しやすくなります。したがって、ストレス対策も胃潰瘍の重要な対策の1つ。ストレスを軽減するには、自律神経など神経を正常化することが必要です。ビタミンB1には神経伝達物質の合成を補助する働きがあります。神経の流れがスムーズになれば、ストレスの軽減につながります。

その4 ビタミンE
 活性酸素は過剰になると、胃などの粘膜の細胞を傷つけます。ビタミンEはその活性酸素を消去すると同時に、潰瘍の進行を抑える効果があります。

その5 ビタミンK
 ビタミンKが不足すると、胃の粘膜が弱くなります。そうなれば、潰瘍にもなりやすくなります。また、粘膜から出血があったときは、止まりにくくなってしまうのです。それを防ぐ意味でも、ビタミンKは十分に補給しておく必要性があります。

その6 カルシウム
 カルシウムが不足すると、イライラしやすくなるのは、よく知られています。そんな状態が続くとストレスが蓄積し、胃潰瘍などの一因になりかねません。それを防止する意味でも、カルシウムの補給は大事。また、カルシウムは潰瘍による出血を防ぐ作用もあります。

その7 亜鉛
 亜鉛は、潰瘍による傷を治す効果があります。胃潰瘍になると、粘膜は荒れ、損傷しやすくなりますが、亜鉛はそれを修復してくれるのです。

その8 サポニン
 細胞膜の不飽和脂肪酸が活性酸素で酸化すると、過酸化脂質という物質に変わります。これが曲者。過酸化脂質は血管や細胞を傷つけ、粘膜の炎症などを悪化させてしまうのです。しかし、サポニンには過酸化脂質の増加を防ぎ、粘膜の傷を修復させる効果があります。 このように8つの成分の相乗効果により、納豆は私たちの胃を守ってくれます。毎日2パックを目安に食べれば、胃の健康を保つうえで、非常に効果が期待できるでしょう。

4.ジャガイモのすりおろし納豆が、ピロリ菌を撃退

 ジャガイモを皮ごとすりおろすと、苦くて泥臭い味になります。この苦味と泥臭さが、ジャガイモの最強の有効成分なのです。この味の正体は、タンニンと呼ばれる成分。実は、このタンニンにピロリ菌を攻撃する作用があるのです。納豆と会わせて食べれば、W効果でピロリ菌を抑えることができるはずです。

 そこで、ジャガイモのすりおろし納豆の作り方を紹介しましょう。
 材料:納豆1パック、ジャガイモ1/2個

(1) ジャガイモを半分に切る。生のジャガイモを皮ごとすりおろすので、スポンジやたわしを使って、きれいに洗う。
(2) ジャガイモの芽には頭痛などの原因になるソラニンという成分があるので、取り除く。
(3) ジャガイモをすりおろす。
(4) 納豆を混ぜる。しょう油はお好みでかける。
(5) 納豆にジャガイモのすりおろしをかけて、出来上がり。

毎日1食、食べるようにすれば、胃腸の調子はよくなっていくはずです。また、ビールのおつまみにするのもいいでしょう。ただし、ビールの飲み過ぎは厳禁。中瓶なら2本程度に留めておくのが望ましいといえます。