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子供の骨が危ない!骨を強くするには運動と納豆!

 老人のみならず、子供の骨折が近年増えています。原因は、運動不足と栄養面の問題。その意味でも定期的な運動は欠かせません。それと同時に栄養面の改善も必須事項でしょう。長年指摘されていることですが、いまだに日本人は骨の材料になるカルシウムが不足傾向にあります。必要十分なカルシウムの摂取はもちろんですが、それだけでは骨は強くなりません。ビタミンKやたんぱく質、イソフラボンといった成分も、骨の強化には必要不可欠なのです。そして、これらの成分をすべて含んでいるのが、納豆。つまり、納豆は骨を強化するための最強食品といっても過言ではないかもしれません。

1.30年前とくらべると子供の骨折は2倍に!

 元気で丈夫なはずの子供ですが、いま、その健康状態はおおいに危惧されています。昔とくらべて栄養状態がよくなっているにもかかわらず、最近、子供の骨折が増えてきているのです。事実、30年前とくらべると、子供の骨折は約2倍にもなっています。いったい、なにが原因なのでしょうか。

 まず、ゲーム機などの人気が高く、そのため外で遊ぶ機会が少なくなり、筋力や瞬発力などが低下していることが考えられます。それに加え、栄養バランスの悪さからくる骨量の低下も見逃せません。意外かもしれませんが、カルシウムの摂取量は高学年になるほど不足しており、特に中・高校生の女性では望ましい所要量を大きく下回っています。

児童生徒等の骨折の発生率 成長期のカルシウム摂取量
児童生徒などの骨折の発生率
(『学校の管理下の災害 −基本統計−』
5〜18から抜粋日本体育 ・学校健康センター発行)
成長期のカルシウム摂取量 (平成11年度国民栄養調査)

2.骨粗鬆症対策は、幼少期から始めなければ手遅れに

 このように、子供のカルシウム摂取量は低く、骨折も増加しています。カルシウム不足が続いたら、いったいどうなるでしょうか。当然、将来、骨粗鬆症になる確率は高くなってしまいます。

 では、どうすればよいのでしょうか。まず、骨粗鬆症は高齢者の病気とみられがちですが、その考えを改めるべきです。骨粗鬆症予防の第1歩は子供のときから始まっているのです。10代後半に骨量をどれだけ増やせるかが、将来の骨粗鬆症のリスクを左右するといえますから、成長期における食生活はとても重要だといえるでしょう。

 子供の骨は大人と違って、急激に成長し、体積が増えるという特徴を持っています。骨量(骨密度)は子供の頃から成人にむけて徐々に上昇するものと思われがちですが、骨の体積が急激に増える成長期には骨の石灰化、いわゆる骨化が追いつかず、一時的に骨密度が減る時期があります。つまり、骨の体積だけが大きくなって、中はスカスカだということです。だから、骨が成長して大きくなっているにもかかわらず、折れやすくなってしまうのです。
 たとえば、上腕部分の骨密度は11才くらいに一度下がり、それからまた上がってくるということが判ってきました。しかも、この時期と子供の骨折の増える年齢とが一致しています。こうした骨折を防ぐには、栄養と運動が大きなポイントを握っています。

3.週3回のランニングで骨を強化

 子供のときからしっかりとした骨を作るには、「運動」は欠かせない要素です。中・高校生時に運動部にいた人とそうでない人では、骨密度に大きな差がありますし、さらに高校卒業後にも運動を続けた人はそうでない人と比べて、骨密度が10%も高く、歳をとってからの骨の年齢にして5〜10年もの差が生じていることが明らかになっています。

 高齢者に多い大腿骨頚部(足のつけ根)の骨折を例に考えてみましょう。大腿骨頚部の骨密度は、20才を過ぎると、少しずつ下がっていきます。その原因としてあげられるのが、運動量の低下です。高校卒業後も運動を続けている人は、大腿骨頚部の骨密度はそれほど下がりませんが、そうでない人は右肩下がりで落ちていってしまうのです。高齢者の骨粗鬆症においても最大の問題は大腿骨頚部の骨折です。子供の頃から適度な運動をする習慣を持つということが最高の予防法といえます。

 丈夫な骨を作るにあたって、成長期からそれ以降の運動が大きな要素を握っていることは、十分理解いただけたかと思います。では、どんな運動が強い骨を作ってくれるのでしょうか。じつは、運動のなかでもバスケットボールやバレーボールなど重力に逆らい、垂直方向に動く運動が骨密度を高めるためにより効果的だということがわかってきました。スパイクやシュートを打つためにジャンプし、そして着地するという刺激が、骨を強化してくれるのかもしれません。

 とはいえ、クラブ活動に入っているならまだしも、日常的にバスケットボールやバレーボールを習慣にするのは困難です。でも、これらの球技にくらべて骨を鍛える効果は少し落ちるかもしれませんが、ランニングでも十分な成果が期待できます。週3回、20分程度のランニングなら、それほど負担にはならないはず。これを習慣にすれば、骨も強化できることでしょう。

4.いまだに日本人はカルシウム不足

 よく指摘されていることですが、日本人は全体的にカルシウムが不足しています。日本は火山国のため、例えばフランスなどと比べて水に含まれるカルシウムなどのミネラル分が少なく、その影響で野菜などに含まれるカルシウム分も少ないといわれます。

 自然に摂取できるカルシウムが少ないのですから、より積極的にカルシウムを摂らなければならないにもかかわらず、どうも必要量が満たされていないというのが現状です。学校給食のある小・中学生は給食で牛乳がでるので、ある程度のカルシウムは補えるのですが、高校生くらいになると牛乳の摂取量が減る分、カルシウム摂取量が減って不足気味になってきます。

 厚生労働省が定めている、カルシウムの1日あたりの必要量は600mgです。これは1日に必要な最低限の量。カルシウムの吸収率は、たとえば牛乳なら約40%、小魚なら約30%と、食品によって異なります。日常生活ではいろいろな食品を摂取しているので、吸収率は平均して20〜30%として計算されています。

 実際にバランススタディー(代謝出納試験)を行った結果、尿に200mg、便に350mg、汗やその他で50mg、計600mg程度のカルシウムが毎日排出されてしまうことがわかりました。そのため、所要量の600mgを摂るだけでは骨を強くすることはできません。骨粗鬆症の予防に必要なカルシウムの量は1日に800〜1500mgが大きな目安となります。ちなみに、カルシウムは1日あたり2500mgまで摂っても大丈夫。年齢が上がるにつれてカルシウムの吸収率も悪くなるため、高齢の方は特に多めに摂ることが重要です。また、子供の頃から意識的に多く摂取することが転ばぬ先の杖となるでしょう。

 また、カルシウムさえ摂っていれば骨への栄養はこと足りていると、誤解している人も少なくありません。鉄筋コンクリートに例えれば、カルシウムはセメント。いくらセメントが十分でも、鉄筋にあたるコラーゲンなどのたんぱく質が不足していれば、もろい建物(骨)しかできません。粘りのある強い骨をつくるには、カルシウムばかりでなくたんぱく質を十分摂って、鉄筋に当たる部分を太くしっかりしたものにすることも大切です。

5.納豆は骨を強くする成分の宝庫

 老いも若きも骨粗鬆症や骨折を防ぐには、適度な運動とカルシウムが必要なことが、十分理解できたかと思います。でも、実際はそれだけでは不十分なのです。骨を丈夫にするには、「ビタミンK2」という成分が大きな鍵を握っているのです。

 ちょっと難しい話になりますが、ビタミンK2は化学名でメナキノンとも呼ばれています。メナキノンには、1〜14までの14種類があります。納豆に含まれるビタミンK2はメナキノン-7にあたり、これは食品では唯一、納豆に含まれているのです。

 骨の形成には、カルシウムはもちろん欠かせません。でも、そのカルシウムを骨にくっつけるノリの役目をするタンパク質(オステオカルシン)の合成にビタミンK2(メナキノン-7)が必須であることが明らかになりました。

 実際、静岡県立大学大学院の研究において、納豆に多く含まれるビタミンK2(メナキノン-7)が骨の細胞の働きを調節し、骨量の保持・増進に効果をもたらすことがわかっています。そして、納豆を摂取することはすなわち、骨粗鬆症の予防に役立つといいます。

 事実、納豆が骨に大きな影響力を発揮しているのではないかということを示す面白いデータがあります。納豆の消費量分布と大腿骨頚部頚部(足の付け根)骨折の分布を照らし合わせてみると、骨折する女性は東日本より西日本に多い傾向が表れました。つまり、納豆の消費量が多いところほど骨粗鬆症による骨折が少なく、納豆の消費量が少ないところほど骨折が多いことがわかったのです。骨粗鬆症で骨折する人はそうでない人に比べ、血中のビタミンK2量が少ないという報告もあります。

骨粗鬆症の発生率と納豆消費量の相関

 つまり、納豆は骨粗鬆症の予防に大きな役割を果たしているといえます。そして、骨粗鬆症など骨が弱くなることによって起こる骨折は、前述したように、子供にも増えています。骨を強くするためにも、成人はもちろん、子供も納豆を積極的に食べるべきだといえるでしょう。なお、納豆にはビタミンK2以外にも、骨を強化する成分が3つ含まれています。順に見ていきましょう。

カルシウム

 骨は常に壊され、新たに作られています。つまり、新陳代謝を繰り返しているわけです。骨を壊すのは破骨細胞によるものです。破骨細胞の働きは、成人以降はほぼ一定ですが、骨を作る骨芽細胞の働きは、成長期以降は徐々に低下していきます。破骨細胞より骨芽細胞の働きが遅くなると、骨の主成分であるカルシウムは減る一方になり、骨粗鬆症の危険性が高まります。骨粗鬆症を防ぐには、成人以降も骨芽細胞の働きを高めることも大きなポイントになります。そのためには、前述したランニングなどで体を動かして骨に適度なショックが加わることが大事。それと同時に骨の主成分であるカルシウムを補給しなければいけません。納豆はカルシウムも豊富に含むので、毎日積極的に摂取し、最低でも1日の必要量である600mgをキープしましょう。

たんぱく質

 骨の約25%は、たんぱく質です。つまり、骨を丈夫にするにはカルシウムの補給とともに、たんぱく質も必要になってきます。納豆の材料である大豆にはたんぱく質が豊富で、しかもたんぱく質を構成するアミノ酸20種類のうち18種類が含まれています。カルシウムは、たんぱく質を構成するアミノ酸のバランスが取れた食品と一緒に摂ると吸収率が高まることが知られています。納豆はカルシウムが多く、アミノ酸のバランスがよいたんぱく質であることから、カルシウムの吸収率を高め、ひいては骨粗鬆症の予防にも効果的なのです。

イソフラボン

 納豆の材料である大豆には、イソフラボンという成分が豊富に含まれています。イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た構造をしていて、その働きも似ていることから、女性ホルモン様作用があると考えられています。

 じつは、骨密度は体内のエストロゲンの減少とも深く関係しています。つまり、エストロゲンが減少すれば、骨密度も低くなるのです。逆にいえば、イソフラボンを摂ることで、骨を丈夫にして骨粗鬆症を予防することができます。

 イソフラボンは、体内でエストロゲンが不足したときに、女性ホルモン様作用を強く発揮します。含有量は0.2%と微量ですが、その働きは強く、納豆菌によって発酵すると吸収率が高まります。そのため納豆はイソフラボンを効果的に摂ることができる大豆製品だといえます。

 このように、納豆には骨を強化する「ビタミンK2」「カルシウム」「たんぱく質」「イソフラボン」の4つの成分が豊富に含まれています。いわば、骨粗鬆症を予防し、骨折を防ぐ最強食だといえます。1日1パック(50g)を目安に食べるといいでしょう。