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納豆文学史「納豆と文学、ときどきこぼれ話」

その2 古辞書にも出てくる「納豆」

辞書というと、現在の「国語辞典」のような語句の意味説明をする書物を多くの方は思い浮かべることでしょう。しかし、古くは文字の読み方を記しただけの、いわゆる「字引」が一般的な辞書でした。それは仏教のお経などを読む際にどのように発音するかを確認するためにまとめられたものでもあったからです。

こうした辞書を古辞書といい、平安時代ごろには早くも作られていたために、ある単語がいつ頃の時代から存在していたかを確認するのにとても役に立つわけです。

古辞書にも出てくる「納豆」

この写真の本は文明17(1485)年に刊行された『下学集』下巻(筑波大学附属図書館蔵)です。豆腐とならんで「納豆」という漢字に「ナツトウ」とふりがながふられています。このように古辞書は現在の辞書と異なって主に読み方が書かれていたことがわかると思います。

この他にも、

  • 文明本節用集    ナの項「飲食門」 納豆(ナツトウ ヲサムマメ)
  • 明応五年節用集   納豆(ナツトウ)
  • 天正十八年本節用集 納豆(ナツトウ)
  • 饅頭屋本節用集   奈の項 納豆(ナツトウ)
  • 易林本節用集    奈の項「衣服」納豆(ナツトウ)
    (中田祝夫『改訂新版古本節用集六種研究並びに総合索引』昭和54 勉誠社)
  • 書言字考 6巻「生植・服食」 豆鼓(ナツトウ)本草 納豆(同じ)
    (槇島昭武『享保二年板書言事考節用集』昭和54 前田書店)

といったような古辞書において納豆の存在を確認することができます。

この納豆が、いわゆる現在の糸引き納豆か浜納豆かの判別はむずかしいところですが、室町時代の終わり頃には、『日葡辞書』から糸引き納豆の形跡が確認できます。

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