1. トップ
  2. 納豆健康学セミナー
  3. 納豆健康学セミナー サテライトシンポジウム in 札幌

納豆健康学セミナー

札幌パークホテルにおいて
「納豆健康学セミナー サテライトシンポジウム in札幌」
を開催しました。

写真

2013年11月15日、北海道・札幌の札幌パークホテルにおいて、「納豆健康学セミナー サテライトシンポジウム in札幌」を開催しました。


日本を代表する伝統食品である納豆は、健康医学、薬学、人文学など多分野で研究が続けられており、新たな機能性成分や日本人との関わり方が解明されてきています。
「納豆健康学セミナー」は、納豆研究の第一線で活躍されている研究者の最新研究結果を提供し、幅広い分野での「納豆の魅力」を記報道に活用してもらうことが目的とし、平成15年より開催されてきました。 これまで東京でのみ開催してきましたが、より多くの方に納豆の見識を深めていただくために、この度は札幌で開催いたしました。

写真

当日は、北海道中から集まってきた納豆ファンに加え、多くのマスコミ関係者の方々が訪れるなか、納豆研究者のお二方をお招きし、最新の研究成果を発表していただきました。


写真

セミナーの初めに、全国納豆協同組合連合会(以下:納豆連) の野呂剛弘会長が「『昔から納豆食いの医者いらず』と言いまして、納豆が健康にいいことはわかっていました。でも、納豆のどこが健康にいいのかは、わかりませんでした。それが科学の進歩によって究明されてきました。ポリアミンという成分で、中年以降の老化の抑制、大腸がんの発生・発症の抑制などの効果があり、海外の研究者も納豆に関心を持っています。日本型食生活が長寿のもとであるとして、世界から注目されています。ところが、日本人の今の食生活がどうかというと、欧米型に移りつつあるわけです。日本食の良さが失われることに懸念を抱いています。そのような中で、納豆、そして日本の食文化を次世代に継承していくことが、納豆連の大きな役目であると考えています。」と挨拶をしました。

写真

続いて、北海道納豆工業組合の中居敏理事長が「昭和24年に北海道納豆工業組合を結成したときは、組合員は120社でしたが、現在は16社です。自慢話になりますが、毎年開催される全国納豆鑑評会は今まで18回開催されてきましたが、北海道ののべ入賞社数は38回になります。全国の中で圧倒的に第1位なのです。また、現在の納豆の大量生産、安くておいしい納豆の供給の発祥の地は、北海道なのです。北大の半澤洵先生が、日本で初めて納豆菌の純粋培養を行った研究者なのです。これからもおいしい納豆を供給していきたいと考えています。」と挨拶をしました。

続いて、各研究者の発表です。

写真

一人目の発表者は、筑波大学 人文社会系の石塚修准教授で、「納豆と日本の食文化−三題噺−」と題し、日本人と納豆の深い関わりについて発表していただきました。


石塚先生は、和食が世界文化遺産に登録されるということは、保護の対象となっていることを意味するため、決していいことではないと指摘し、伝統食を次世代へ継承していく責任が私たちにあることから話をはじめました。それから納豆に関する3つの問いに答えていきました。

  • 写真
  • 写真

「なぜ、関西人は納豆をたべないか?」
かつては関西では納豆が食べられていた記録がたくさんあります。
千利休の茶会の記録を見ると、懐石料理に納豆汁を用いており、秀吉も食べたと書いてあります。松尾芭蕉や与謝蕪村の俳句の中にも納豆が登場します。納豆は冬の季語であり、冬に体を温めるためのタンパク源として、納豆は重要な食べものでした。京都の常照皇寺には上皇と納豆にまつわる伝説が残されています。
では、いつ頃から関西では納豆が食べられなくなったのでしょうか。もともと関西では納豆は専門業者が製造・販売するものではなく、家で作るものだったのです。明治以降、農家が減ってきて、家で納豆を作る人が少なくなっていくとともに、納豆を食べる食文化がすたれていったのです。

「なぜ、朝定食の定番は納豆定食なのか?」
有名な牛丼チェーンなどでは、朝定食というと、納豆定食が定番メニューです。これには歴史的な理由があります。江戸時代の記録を見ると、普通、ご飯は一日に一回だけ炊くものでした。関西は昼に炊くことが多く、関東では朝に炊くことが多かったのです。やはり納豆は温かいご飯とともに食べるのが好まれたので、朝食に食べられるようになったと思われます。

「なぜ、納豆売りは子どもたちの仕事になったのか?」
都会に出て一旗揚げよう、勉強しようという若者、子どもにとって、学校に行く前の朝にできる仕事は、新聞配達、牛乳配達、納豆売りくらいでした。東京には大きな納豆問屋があり、納豆を卸すだけではなく、天秤棒やザルなどの道具も貸してくれました。資本がなくても始められ、日銭の稼げる仕事だったのです。つまり、納豆売りという仕事は、奨学金などの無い時代において、若者たちのセーフティーネットとして機能していました。明治の人たちは、納豆を売りながら、粘り強く、近代国家について考えていたのです。

 納豆という切り口から、日本の食文化の変遷、近代化の歴史など、多くのことが見えてくる、もっと聞いていたい、有意義で楽しいお話をしてくださいました。

写真

二人目の発表者は、自治医科大学さいたま医療センター循環器病臨床医学研究所の早田邦康准教授で、「納豆のポリアミンによるアンチエイジング」と題し、ポリアミンを多く含む食品としての納豆の魅力を科学的に発表していただきました。


早田先生は、まず、「今日はポリアミンを覚えていただきたい。納豆は遺伝子に働きかけて健康長寿を達成する食べものなのです」と言われ、聴衆を講演に引きこみました。

  • 写真
  • 写真

始めに、健康食品についての疑問を呈されました。巷で売られている健康食品には、科学的根拠のないイメージ商品が多いこと、また、分子量が大きくて体内に吸収されないものもあること、さらに、科学的には一部納得がいくものの、哺乳類では健康効果がないものもあることを述べられました。
わかりやすかったのは、人間の体を作ることを、家を建てることに例えた話でした。木から材木を作り、大工道具を使って材木を組み立てて家を建てる。人間は、食物を消化して栄養素を作り、酵素を使って栄養素を吸収して体を作る。この大工道具に当たる酵素の活性が、年をとるにつれて低下していくのです。

続いて登場したのが、「炎症」というキーワードでした。体内で慢性炎症が起きると酸化物質がまき散らされ、動脈硬化、アルツハイマー、胃がん、大腸がん、糖尿病などの原因となることを指摘されました。この慢性炎症を抑えるのが、ポリアミンという物質であり、免疫細胞を若返らせて、酸化物質がまき散らされるのを抑えることができます。さらにポリアミンは、遺伝子に作用して、遺伝子修飾というものを少なくする力を持っています。このため、がんなどの発生を抑えることができるのです。

最後に、ポリアミンが多く含まれる食物が紹介され、聴衆は真剣に耳を傾けていました。大豆とその発酵食品(納豆など)、豆類、ナッツ、精製していない穀物、内臓や卵を含む魚介類、野菜、キノコ類など、日本食が高ポリアミン食品であることが示されました。納豆を一日66gつまりは1パックちょっと、毎日食べるとポリアミン血中濃度がアップすることは、はっきりデータで示されているそうです。大切なのは、毎日食べ続けることなのだそうです。納豆を、早く帰って食べたいと思わされました。

最後に出席者から、積極的な質問がいくつも出て、両先生は丁寧に答えて下さいました。今後も納豆連では「納豆健康学セミナー」を通じて、様々な分野の研究者による最新の研究結果から、知られざる納豆の魅力をお伝えしていきます。どうぞ、御期待下さい。