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納豆健康学セミナー

日本ポリアミン学会で納豆にも大きく関わる発表がありました
〜ポリアミンの大腸がん抑制効果を日本で初めて確認〜

東京に雪の舞った2月6日(火)、東京・浜松町駅に隣接する世界貿易センタービルで、日本ポリアミン学会の第4回年会サテライトシンポジウムが開催されました。ポリアミンと言えば納豆に豊富に含まれるアンチエイジング成分として広く知られています。今回はポリアミン研究の第一人者、早田邦康先生(自治医科大学付属さいたま医療センター准教授)より、この学会の講演で新たな発見に関する発表があるとの事で、納豆連関係者も聴講させて頂きました。
まず日本ポリアミン学会、第4回年会サテライトシンポジウムの代表世話人である東北大学大学院 生命科学研究科の草野友延教授より開催趣旨についての説明があり、早田先生の発表に先立って草野教授が植物の面からポリアミンを研究した「植物の生存と自己防御におけるポリアミンの働き」についての発表がありました。

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    日本ポリアミン学会
    第4回年会サテライトシンポジウム
    代表世話人 草野友延 教授
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    草野先生の講演
    植物の生存と自己防御におけるポリアミンの働き

草野先生は長年にわたる植物のポリアミン研究から、ポリアミンの4つの種類の中でもプトレシンやスペルミジンを生成することのできない植物は胚芽の段階で死んでしまうことを突き止め、ポリアミンが植物の生存に必須の物質であるとの立場をとっています。
しかし一方で、ポリアミンの4つの種類の中でもスペルミンやサーモスペルミンを生成できない植物の場合は通常通りに育つため、草野先生の上記の立場は否定的に思われることが多いそうです。
今回の発表ではスペルミンやサーモスペルミンを生成できない植物が外部ストレスに弱いこと、逆にそのような植物にポリアミンを与えるとストレスに強くなるとの研究結果を海外の事例を用いながら発表し、未だ解明されていないことが多いポリアミンに関する可能性を示しました。

続いてこの学会のメインである早田邦康先生による「ポリアミンによる健康長寿 老化および発ガン抑制」の発表となりました。
早田先生は今回、「健康食」や「長寿国」という視点から食事とポリアミン含有率の関係性に注目しました。全般的に寿命の長い国や地域には健康に良いとされる伝統食品があるため、長寿の原因はそれらの食品の成分(例えばフランスであれば赤ワインのポリフェノール)が健康に良いためではないかと思われていました。しかし、早田先生はそれでは説明のつかない事象が多々ある事を指摘。長寿の原因となる伝統的な食習慣に世界的に共通するものとしてポリアミンの存在に着目。

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    早田邦康 自治医科大学付属さいたま医療センター 准教授
    「ポリアミンによる健康長寿 老化および発ガン抑制」

そして研究の結果、日本食と地中海食を例に、ポリアミンの濃度の高い食事を食べる事で体内のポリアミン濃度が高まり、体内の炎症を抑える事の因果関係を発見。炎症を抑える事で老化を食止める効果、アンチエイジング効果を発見し、これがポリアミンが「アンチエイジング因子」と呼ばれる所以となっています。

今回、新たに分かった事実とは、このポリアミンのアンチエイジング効果が遺伝子レベルで効果を発揮しているという事でした。遺伝子の変化により生じる病気といえば、「がん」です。
早田先生は日本で初めてポリアミンが遺伝子レベルでも遺伝子の炎症(メチル化)を抑え、がん、特に大腸がんの発生を抑制する事をマウス実験によって確認し、ポリアミンの大腸がん抑制の機序を見出したのでした。この研究結果はすでに論文にまとめられ、近々承認されるとの事です。
ポリアミンを多く含んだ食事が、がんを抑制するという事であれば、ポリアミンを多く含む「納豆」にも大腸がんの抑制効果があると考えられます。現に早田先生の発表でも、日本人の長寿を支える伝統食品として「納豆」が度々高ポリアミン食の例として取り上げられていました。これは医学界のみならず、納豆業界にとっても大きな発見と言えるでしょう。

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    早田先生の講演
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    発表に聞き入る聴講者の方々

講演終了後の記者発表を兼ねた質疑応答でも、この点について多数の質問が飛び交い、この研究結果に対するメディアの方々の注目の高さが伺えました。
いまやこれだけの注目を集めるまでになった成分であるポリアミンは、納豆にとって重要な存在となりつつあります。今後も納豆連は医学と納豆の発展のため、早田先生、草野先生によるポリアミン研究に強い関心をもって注視していきます。

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    聴講者の質問に答える草野先生
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    講演終了後の記者発表(質疑応答)