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アンチエイジングの本命=高ポリアミン食

自治医科大学大宮医療センター
総合医学2・大学院
早田邦康氏

はじめに

医食同源という言葉で表される様に、日頃からバランスのとれた食生活をする事で病気を予防できることを我々は経験から学んできた。充分な食物も得る事のできなかった時代には、体内の代謝に必要不可欠な特定のビタミンやミネラルなどが欠乏した食物を継続して摂取することによって健康を害する事を経験してきた。しかしながら、私たちの体は物質をある程度は貯蔵しておく事ができる。よって、現在のような豊富な良好な食料事情の下では、よほど頑固に偏食をしない限りは、ある種のビタミンやミネラルや栄養分が不足することは極めて希な事態と考えてよいだろう。

ところが、このような豊富な食料事情は、新たな健康に関する問題を引き起こしている。生活習慣、特に食生活の習慣などにより誘発されると考えられる生活習慣病と呼ばれる病気である。代表的なものとしては、心筋梗塞、脳梗塞、癌などが挙げられるが、この3つの疾患は先進工業国の死因の大半を占める病気である。生活習慣病はヒトの体に老化(加齢によって生じる様々な変化)が生じる事によって発生するものであり、食事内容などの生活習慣が加齢による変化に影響を与えることによって生活習慣病の進行が左右されると考えられている。食習慣は嗜好の違いによる個人や家庭ごとでも違いがあるばかりではなく、地域や国家間では長年にわたって作られてきた慣習などによる違いが存在する。よって、生活習慣病の進行の程度は個人差があるだけではなく、地域間や国家間でも差が認められる。実際に、社会背景や人種構成が類似したヨーロッパの国家間においても生活習慣病の発症率には大きな差が存在する。よって、生活習慣病の発症を抑制する事ができれば、個人では長寿を健康でまっとうすることが可能になるばかりではなく、国家や地域全体の社会全体の健康や医療費の削減にも貢献できる。

これまでにも長寿に寄与すると考えられる物質が数多く提唱されてきた。しかし、残念ながら、実際にヒトで生活習慣病に対して効果が得られたものはほとんどないのが現状である。私は、ヒトの体内でポリアミンという物質が生活習慣病や老化そのものの進行に関与すると考えられている因子を抑制する作用のある事を見いだした。しかも、このポリアミンという物質はこれまで生活習慣病に対して抑制的に作用する事が指摘されてきた食品と密接な関連があり、世界一長寿である日本人の食生活の基礎となっている“大豆の発酵食品”は高ポリアミン食の代表格でもある。私が発見したヒトの免疫細胞の機能におよぼすポリアミンの影響を紹介し、納豆で代表される高ポリアミン食のアンチエイジング作用について検討する。

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