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アンチエイジングの本命=高ポリアミン食

自治医科大学大宮医療センター
総合医学2・大学院
早田邦康氏

ポリアミンの抗炎症作用

ニューヨークの研究所で研究していた1997年に、私はその中の一員としてポリアミンが炎症を誘発する炎症性サイトカインの産生を抑制して炎症を軽減する作用のある事を報告している。その論文の中では、ポリアミンであるスペルミンがLPS(エンドトキシン)やPMA(phorbol myristate acetate)の刺激による末梢血単核球(リンパ球等)からの炎症性サイトカインの産生を抑制することや、炎症を誘発するCarrageenanという物質をマウスの足底に投与した際に、マウスの炎症を軽減するという事を示した。これらの実験はポリアミンが急性炎症を抑制する事を示したものであるが、その後2000年以降になり、他の研究グループからもポリアミンが急性炎症を抑制するように作用する事を示すデータが報告されている。

帰国後しばらくの間、外科医としての臨床の感覚をとりもどすために臨床だけを行ってきたが、2002年から研究が再開できる様になった。その結果、ヒトのポリアミンであるスペルミンとスペルミジンが、ヒトの末梢血単核球の細胞表面に存在するLFA-1の発現を抑制している事を見いだしたのである。試験管レベルにおけるポリアミンによるヒト免疫細胞のLFA-1発現抑制は選択的であり、他の細胞表面因子の発現には変化を認めなかった。同時に、ボランティアを募り、多くの人の体内での末梢血単核球表面のLFA-1の発現の状況とポリアミン濃度を測定して比較した。すると、納豆を食べ続ける事によって血中濃度が上昇したスペルミンの濃度が高い人ほど免疫細胞表面のLFA-1の発現が弱くなっている事が判った(図7)。

図7 血中スペルミン濃度とLFA-1の関係
図7

健康成人男性ボランティアから採取した血液中のスペルミン濃度と末梢血単核球のLFA-1発現強度の関係を検討した。LFA-1はフローサイトメトリーを用いて測定し、血中ポリアミン濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
血中スペルミン濃度の高い人ほど末梢血単核球のLFA-1の発現が抑制されている。

LFA-1は、炎症や免疫細胞の機能を発揮する上で極めて重要な因子であり、この因子が抑制されると、LFA-1を介する免疫機能は発揮されにくくなる。実際に、ポリアミンによってLFA-1が抑制された末梢血単核球は、LFA-1に関連する細胞機能が抑制されていることも判った。ところが、ポリアミンによるLFA-1抑制作用は選択的であり、ポリアミンはリンパ球の全般的な免疫状態を示すリンパ球幼若化反応(PHAおよびConA刺激)を亢進することもわかった(図8)。この反応性はリンパ球(特にT細胞)の機能不全を調べる検査であり、この反応が亢進するということは末梢血単核球の多数を占めるリンパ球の機能は活発である事を示すものである。さらに、ポリアミンが免疫細胞のNK活性にどのような影響を与えるのかも検討した。NK活性は癌発生の見張り番として重要であり、ストレスなどにより活性が低下する事が知られている。人の免疫細胞を血液中から採取して培養液中で3日間程度培養したところ、スペルミンもしくはスペルミジンを取り込ませた細胞のNK活性は、ポリアミンを混じない細胞と比較すると、高い活性状態で維持されていることも見いだした(図9)。これらの検討では、免疫細胞のスペルミン濃度の上昇を1.2-3倍程度に設定している。納豆を長期間食べた場合にはスペルミン濃度が平均で1.36倍であったので、人の体内で生じるポリアミン濃度の上昇の範囲内で、免疫細胞の機能に様々な変化が生じる事を確認したことになる。

図8 スペルミンによる細胞機能の亢進
図8

健常人ボランティアから採取したヒト末梢血単核球を0μMもしくは100μMの濃度のスペルミンを混じた培養液で一晩培養した。その細胞をphytohemagglutinin(PHA)もしくはconcanavalin-A(Con-A)で刺激してリンパ球の反応を検討した。0μMの濃度で培養した細胞の反応性を100%として、100μMで培養した細胞の反応を検討した。
スペルミン濃度の上昇した細胞のPHAとCon-Aに対する反応性が亢進している。

図9 ポリアミンのNK活性への影響
図9

A:ポリアミンを添加せずに培養
B:スペルミジン500μMと培養
C:スペルミン100μMと培養
D:スペルミン500μMと培養
健常人ボランティアから採取したヒト末梢血単核球をそれぞれのポリアミンとともに3日間培養した。培養後に細胞を回収しNK活性を測定した。ポリアミンとともに培養した細胞のNK活性の値を、ポリアミンを加えない培養液で培養した細胞のNK活性値と比較した。
ポリアミンを加えて培養した細胞のNK活性は、ポリアミンを加えないで培養した細胞より高い状態であった。

ポリアミンは炎症を誘発する炎症性サイトカインの産生を抑制し、炎症を誘発する因子であるLFA-1を選択的に抑制すると同時に、細菌などの外敵からの防御機能であるリンパ球の反応性を亢進させて、NK活性の低下を抑制するというユニークな作用がある。核酸、アルギニン、グルタミンを投与された重症患者では、過剰な炎症が抑制され細菌感染などの合併症が抑制されるというユニークな効果が認められる事を前述した。しかし、その機序には不明な点が多いことも事実である。核酸にポリアミンが多量に含まれ、ポリアミンはアルギニンとグルタミンから合成されるという事実を考慮にいれると、得られた効果がポリアミンによるものであると私が考えている理由が理解できると思う。

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