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アンチエイジングの本命=高ポリアミン食

自治医科大学大宮医療センター
総合医学2・大学院
早田邦康氏

ポリアミンによる血栓溶解作用

納豆の抽出物に試験管内で血栓溶解作用のあることは有名である。しかし、血栓の形成を抑制する作用を有する食品の抽出物は納豆だけではない。納豆の抽出物と同様に、納豆の原料である大豆の抽出物を動物に投与すると血栓の形成が抑制される事が判っている。さらに、ある種の発酵食品にも血栓溶解作用や血栓形成抑制同様の作用のあることが報告されている。しかし、これらの抽出物による血栓の形成抑制や血栓溶解の作用機序に関しては不明な点も多かった。

納豆や大豆の抽出物には多量のポリアミンが含まれており、納豆や大豆の抽出物を投与する事によってポリアミンが動物の体内に取り込まれて、その濃度が上昇することは容易に推測できる。ポリアミンの濃度が上昇すると、動物の体内では炎症性サイトカインが産生されにくく、炎症が誘発されにくい状態になる。体内には血栓溶解を促進するplasminogen activator(PA)という酵素が存在するが、この酵素の活性を抑制するplasminogen activator inhibitor type l(PAI-1)という酵素も存在する(図10)。炎症が誘発されると、血栓溶解促進作用のあるPA の活性化を抑制するPAI-1が活性化される。すなわち、炎症によって血栓を溶解するPAが作用しにくくなり、血栓が溶解されにくくなるのである。この事を反対に考えると、炎症を抑制すれば血栓は溶解されやすくなるという事になる。実際に、手術を受けた患者では、手術後に炎症が起きるために、血栓ができやすい状態になる。特に動脈硬化の進行した高齢者では、手術後に脳梗塞や心筋梗塞を併発する事がある。以前、外科手術の後には出血を防ぐために止血剤を投与していたが、炎症と血栓の関係が判るようになってからは血栓が生じにくくなるような薬を投与するようになった。動物実験での血栓抑制試験も、基本的には炎症を誘発させて血栓形成や血栓溶解を検討している。すなわち、これまで報告された大豆や発酵大豆の抽出成分による血栓溶解作用の機序は、抽出物に含まれているポリアミンが炎症を抑制することによって作用を発揮したと考えることもできる。興味深いのは、ポリアミンを投与すると、実験動物の血栓が形成されにくくなる事が報告されているという事実である。

図10 血栓形成と溶解
図10

炎症でプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターが活性化されると、プラスミノーゲンアクチベーターの作用が抑制される。この事によってプラスミノーゲンがプラスミンに変化できず、血栓溶解作用が低下する。

その他のポリアミンのアンチエイジングに関連する作用

老化や老化に伴う生活習慣病は遺伝子の損傷と関係があると考えられている。この遺伝子の損傷を生じさせるのは炎症にともなう酸化物質の作用が有名であるが、放射線などによる直接的な障害も指摘されている。これまで述べた様に、ポリアミンは炎症の誘発を抑制することによって抗酸化作用を発揮する。さらに、ポリアミンは放射線による障害から遺伝子を保護する作用のあることも報告されている。ポリアミンは細胞内では核に存在し、遺伝子と電気的に結合して存在するが、その事によって遺伝子の形態を変化させ、放射線による遺伝子の損傷を防御していると考えられている。

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